愛され貴族【iwdt・nbdt】

デビューの光景 ページ15

やっと、デビュー。
その切符を手にした。

「デビュー日の朝から披露できるなんて…ありがたいよ。」

「…うう…ねむ。」

翔太が目を擦りながら、楽屋に。
緊張が程よく解けて疲れたんだろうね。
照と目が合うが、翔太ならば仕方無いと半ば、諦めているので、俺は彼に提案する。

「翔太、俺の膝、使う？」

「今日…優しいね。」

いつも優しくないみたい。
確かに2人にグイグイ来られるとスルーしたり、適当に受け流す事が多いけど…。

「…じゃあ、貸さないよ。」

「ごめんってば、す、少し寝かせて…。」

「…ん。」

翔太に膝枕をするのは久々かも。
すぐに眠りの世界に旅立った翔太。
俺が翔太を安心させられているなら、それはそれで嬉しいけど…。

「舘さん。」

照が小さな声で俺の名前を呼ぶ。

「どうしたの？」

その手には缶コーヒーが。

「…あげる。」

「ありがとう、照。」

その優しさが最早、愛おしい。
正直、照も膝枕したいんだろうけど…。
俺は照の頭を優しく撫でる。

「なっ！？」

「普段はやらないけど…偶にはね。デビューというおめでたい日だし、甘やかすのもありかなって。」

照の表情筋が緩みまくっている。
それにはあえて触れないでおこう。
これは俺の経験から、賢明な判断だ。

他のメンバーはどうなのかって？
目を合わせたら、負けだと思っているが、他のメンバーは俺を見てニヤニヤしている。
多分、みんな、珍しいと思っているのだろう。偶には俺だって良いって言う日だってあるんだよ！

俺は怒りを鎮めるが如く、コーヒーをゆっくり飲む。

照の気遣いは助かる。
膝枕をやる側の俺が寝てしまったら、翔太にも迷惑がかかって何の意味も無い。

ファンの皆さんに支えられてきたから、今度は俺たちが少しでもファンの皆さんの心の支えになるような存在になれたらいいと思う。

このデビューという記念日をいつまでも忘れずに、常に初心を忘れず、謙虚に頑張っていこう。

「…あれ？」

隣に座っている照が腕を組んで寝ている。
しかも、俺の背にくっついて。
ミイラ取りがミイラになるってか…。

仕方無いな。
照も翔太も適度な時間に俺が起こしてやるよ。

今日は記念日だし、少しは許してやる。
このバランスが大切だもんね。


「…これからも末永く…宜しくね、翔太、照。」


俺がボソッと呟く。


これから共に進んでいく「仲間」であり……


「恋人」だもんな。

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