その額縁は似合わない ページ2
最初は、ドッキリだと思った。
よく仕掛けられていたし、今回も、意地の悪いドッキリだろうと、あっけらかんとした頭で考えていた。
『……』
「……」
横たわるのは、同僚のA。
最初は、見ても何も思わなかった。実感がわかなかったのか、なんなのかは知らないが。
sha「A、さあ、なあ、起きてや、汚いで、風呂、入りや」
そう言われて顔を叩かれても起きないAを見て、酷く耳鳴りがした。
何も聞きたくなかったのか、ただ単に俺の空耳なのか、本当に耳鳴りがなったのか。
なにも、分からない。
「……見てやグルさん、気持ちよさそうに寝とるで」
隣にいる同僚に、中身のない言葉をなげかける。
ここで冗談でも言ったら、Aは突っ込んでくれるだろうか。
gr「……嗚呼、せやな。絵になるのが腹立つわ」
珍しく訛りが出ていて、びっくりして彼の顔を見た。
憎たらしいほどに酷く美しい顔が、美しく酷く歪んでいた。その時、つっかえが取れたように、すとんと言葉が落ちた。
Aは、死んだのだ。
彼女の美しい顔を見て、天井を見上げる。天国にいるかも、と思って見たと言ったら、嘘になるけど。
案外、仲間の死って、俺にとってこんなもんなんかな。覚悟はしとったけど、すんなり行くな、意外と。
……結構、クるなぁ。
シャオロンとゾムが崩れ落ちて泣いているのを見て、耳鳴りが終わる。隣から、鼻をすする音が聞こえた。
「……俺、そこまで非情な人間とちゃうんやで。」
美しく固まった彼女を見て、俺も顔を歪める。ボロボロの服で、何も堪えていないようなすまし顔で。
お前その顔似合っとると思っとんなら、間違っとるよ。ぜんぜん、似合っとらんよ。
”トントン、この任務終わったらさ、一緒に手合わせしてよ”
”ええけど……なんでそんなにやけとるん”
”いやあ？楽しみだなって”
……やっぱり、似合わへんよ、お前。
「お前に
ぽつりと言った言葉は、きっと誰かの耳鳴りに消えていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 698人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
