金木犀 (ページ6)

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第5話　春の終わりに君はページ6

(佐久間side)

治療が始まり、ピンク色だった髪の毛も、いつのまにか全て抜け落ちた。

窓の外を見ると、桜は散り、夏が訪れ始めた。

…照、元気かな。

考えても無意味だけど、やっぱりどうしても会いたくなる。

照が会いにきた。

でもね、家族以外は面会禁止にしたんだ。

…メンバーも家族、それはそうなんだけど。

一番知られたくない姿を何よりも大切で大好きな

家族みたいな仲間になんて見せられないでしょ？

トイレに行った時に、鏡を見る。

いつの間にか落ちてしまった筋肉。

帽子で隠した頭。

血色の悪い肌。

…俺、惨めだなぁ。

ベットに戻ると、医者がやってきた。

医者「手術日、決まりました。」

「…そうですか。」

医者「…本当にいいんですか？皆さんと会わなくて。」

「…いいんです。これで。

でも、もし僕が記憶がなくなってしまったら…。

そのときは、これをメンバーに、そして、これを俺に見せてください。」

本当は会いたい。

覚えていたい。

そんな俺のエゴを押し付けるかのように、先生に言うと、先生は悲しそうに笑って

医者「…分かりました。」

そう、一言呟いた。