金木犀 (ページ4)

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第3話　少しずつページ4

佐久間side

「ねー照。来週のこの日、会えないかな。」

岩本「いいけど。」

そう言って、照に約束を取り付ける。

この日が最後。

ここで、俺は消える。

みんなに気づかれないように、少しずつお仕事を減らしてもらって。

知らない間に、いなくなっていたかったから。

…本当はすごく怖い。

自分が自分じゃなくなっちゃうかもしれないから。

でも自分が弱っていく姿は見せたくなかった。

そう考えながらあっという間にその日になった。

「照ー！お待たせ。」

岩本「ううん。全然待ってないから。じゃ、行こっか。」

今日は2人で桜を見にいく。

桜は俺たちの思い出の場所。

…だからここに来たかった。

岩本「…綺麗だね。」

「そうだねー！」

「ねー、照。知ってる？
桜の花が咲くのは10日ぐらいしかないんだって。」

岩本「へぇー。…じゃあ、今の姿を目に焼き付けないとね。」

「そうだね。」

2人で夕方になるまで桜を眺めてた。

岩本「…来年もまたここに来ようね。」
俺にはできない約束だけど…、願ってしまう。

「また来たいね。」

もう夜だからって言って車で家まで送ってくれた照。

岩本「じゃあね。」

少しずつ、照が遠ざかる。

少しずつ、俺を蝕んでいく病気。

…もう少しだけそばに、なんてことは言えない。

俺が決めたことだから。

…甘えちゃダメ。

佐久間「バイバイ！」

バイバイ。俺の大好きな人。

…ごめんね。