拝啓、15の君へ (ページ1)

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【哀】ページ1

屋上

『…ふう。』

深夜。

風が少し湿っていて、空気が気だるい。
…まるで私の心みたい。

何もかも辞めたかった。

この夜景が綺麗に見えることさえ、疎ましかった。

あそこのビルの中には、愛があるのだろうか。
温かいのだろうか。

その温かさに触れることさえ、私には許されない。

…いや、受け取れないほどに、“私”は“私”に蝕まれているんだ。

もう、さよならしよう。
そうすれば、全部楽になる。

そう思って、フェンスに手をかけた時、

？？「何してんのー？」

やけに気だるそうな声が耳に入ってきて、フェンスから手を離す。

『…別に。外見てただけです。』

？？「ねー。お姉さんもここで死ぬつもり？」

なんかサラッと凄いこと言ったなこの人…。
でも、その通りすぎて何にも言えない。

『…はい。』

？？「やっぱり笑先越されるとこだったわ。」

そう言って、髪をサラッとかきあげる。
…ん？この人…

『…深澤さん、ですよね。』

深澤「え、俺のこと知ってくれてるの？めっちゃ嬉しい！わら」

そう言って笑う今にも消えそうな彼は、紫色のつなぎを着ている時の笑い方と同じだった。

深澤「…で、お姉さんはさ、どうして死のうと思ったの？」

またまた爆弾発言。ストレートすぎて何にも言えない。

『…嫌になったんです。何もかも。』

愛されない人生だった。

親からも愛されなくて、暴力にも耐えてたけど、大学卒業と同時に、逃げるように家を出た。
その後すぐに就職した芸能事務所。
私はマネジャーをしてた。
…でも、どれだけ頑張っても、成果は他の人の手柄にされた。
マネジャーとして付いていたグループの子達も守ってくれてたけど、それ以上にスタッフからの執拗な嫌がらせに耐えられなかった。
…もう、限界だった。

そんな話を、深澤さんは嫌な顔ひとつせず聞いてくれた。

深澤「そっか…。」
そう言って少し何かを考えてからこっちを向く深澤さん。

深澤「ねー、見て。」
深澤さんが腕を捲ると見えたのは、赤い直線の数々。

深澤「ひどいでしょ、この傷。…やめられなくなっちゃったんだよね、リスカ。」
深澤さんは手首を見ながら寂しく笑った。

深澤「一度見たものって、忘れようとしても忘れらんなくてさ。
…やっぱアイドルって大変だな〜。
…メンバーには隠し通してる。ドラマ班の名にかけて、ね？わら」

(続く)