8話 強く ページ9
いつものラーメン屋の個室でたっつんとふたり。
『俳優業も大変だけど、マネージャーさんもやっぱり大変だね。
…けど、こういう裏方の仕事もいい気がする。
私だからこそ、わかることも山ほどあるからさ。』
深澤「蒼ちゃんはさ、やり残したこと?はないの…?」
『…うーん。』
そう言われてもわからない。
けど。
『…もっと、周りの人を魅了したかったっていう気持ちはある。』
私にとって、それぐらい大切な職だったから。
『けどね、死ぬ直前に思ったのは蓮のことだったからさ。
私の未練は、蓮を置いていったことなんだと思う。』
深澤「…蒼ちゃんの気持ちもわかるけどさ、やっぱり俺は伝えたほうがいいと思うけどなぁ。
蓮、今でも会いたがってたし。」
『それは私も山ほどわかってるよ…。
でもね、もう一度生まれ変われたからには、私には蓮を、みんなを守りたい。
だからね、強くなってもらわなくちゃ。…蓮も、私も。』
いつ、私がいなくなってもいいように。
深澤「…その時点で十分強いよ。蒼ちゃんは。」
『…ありがと。』
深澤「…後悔しない選択をしてね。」
『わかってるって。』
私は伸び切ったラーメンを一口頬張った。
136人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひな | 作成日時:2023年11月9日 10時