もう一度だけ (ページ6)

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5話　秘密ページ6

深澤「白川さん。起きて…。」

…たっつんだぁ。…ったく、もう少し寝かせてよ…。
『…たっつんもう少しだけ…。』

深澤「…蒼ちゃん？なわけないか…。」

夢を見ていた。

私が死んだその後の。

…病院に来て、変わり果てた私の姿を見て泣き叫ぶ蓮の姿。

私は抱きしめてあげたいのに。

死んじゃってごめん。

でも私はまだ生きてるんだって言いたいのに。

何にもできなくて。見つめることしかできなくて。

『…蓮…ごめんね…泣』

気づいたら、声に出てた。

ハッとなって目を開けると、そこには私を見て呆然とするたっつんの姿。

深澤「蒼ちゃん、なの…？」

そう言ったたっつんの目は今にも泣き出しそうだった。
たっつんにごまかしは効かない。

『…そう言ったら信じてくれるの？たっつんは。』

深澤「…その呼び方は、蒼ちゃんしかしなかった。だから、信じたい、な…。」

『…そっか。

…ふわっと宙に舞ったあとね、いろんなこと思い出してたの。

…みんな、置いてっちゃう。私はまだやりたいことが山ほどあるのにとか。
蓮からさ、『待ってるね。』そう送られてきたのに、私はもう行けないんだ…とか。

ずっと蓮と幸せでいたかった…そう思ってたらこの姿になってたの。

…びっくりでしょ？』

深澤「まあそりゃびっくりはするけど…。」

『…また会えてよかった。』

深澤「蒼ちゃん…泣」

そう言って抱きしめられる。

『もうたっつんったら。』

深澤「…蒼ちゃんが死んだって聞いた時、世界が止まった。

…それぐらい、俺らにとって大事な人だったから。

…だから、俺ももう一度会えてよかった。」

『…蓮には言わないで。驚かせちゃうから。』

深澤「…いいの？それで蒼ちゃんは。」

『…いいの。みんなにまた会えた。それだけで。』

深澤「…そっか。」

たっつんにはバレちゃったけど。

それで少しだけ自分の背負っているものが軽くなった気がした。