下を向いてもいいですか。【青葉城西】

26.わかってるよ ページ27

あれ、こんなに顔って良く見えたものだっけ。









気づいたらそんなことを言っていた。









それに反応した孤爪さん。









｢顔、ずっと下向いたままだったよ。あのテレビの後から｣









昔のことを思い出すといつもそうだよ。









癖って抜けにくいよね、と孤爪さんが言う。









なんでもかんでも見透かされてる自分が恥ずかしかった。








あのとき逃げなきゃよかったとかそんな後悔はないけれど、あのときの間違ってしまった言葉にだけはものすごく後悔している。









自分勝手だった私には深く考える力なんてなくて傷つける気なんて無かったのに。









｢連絡とか取ってないの？｣









『取ってません。二年間、ずっと』








そう、最初は連絡待ってた。だけど待ってる間に辛くなってきて履歴消したんだ。









もう会うことはないだろうから別に良いんだどね。









｢お前それ逃げてるだけじゃねぇの｣








ずっと話を聞いていた黒尾が口を開いた。








逃げてるだけ。そんなの、私が一番、









『私が一番わかってるよ』







逃げたっていい、私はそう思いながら生きてきた。中学時代からずっと。









全ては自分を守るため。









自分が傷つかないように。







助けを呼ぶ前に逃げれば、迷惑なんてかけないし、とても楽。







｢逃げるくらいならマネージャーなんか、手伝いなんかしなきゃよかったじゃん、｣








目の前がぐるぐる。









私のやったことは間違ってた。知ってる。








私のやったことはみんなを傷つけた。知ってる。









全部、全部知ってる。









だから下を向いて現実を見ないように逃げてきたの。

27.もうお前は→←25.顔を上げたら

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す