溺愛男子【岩橋玄樹】 (ページ14)

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振り回される狼 1 ページ14

-玄樹side-

俺は猫を拾った。

違った。

猫みたいな人間の女を攫ってきた。

嫌がる相手に無理やり頼み込んで、一緒に住むことを了承させた。

…期間限定ではあるけど。

昨日は体調の悪かったAも今日はすっかり良くなり、昼真っから外に出たそうにウズウズしていた。

「ねえ玄樹～。」

「ん？」

「この辺には何があるの？」

「え？何って？」

「例えばー…、コンビニとかー、ファミレスとかー、公園とか、遊園地とか！！」

指を折りながら例えを上げていたAは、後半ハイテンショになりながら目を輝かせて俺を見てきた。

「……ないよ、そんなもの。」

「むぅ。」

明らかに拗ねた顔で頬を膨らませている。

ねぇ、誘ってるの？

「遊園地はないけど、確か小さい映画館があったかも。」

「！！！」

途端に明るくなる表情に思わず俺の頬もゆるむ。

「今日はダメだよ。病みあがりなんだから。」

「えぇぇぇ～！！」

「今日はコンビニくらいにしといて。このマンションの下にあるから。」

「近っ！もっと遠くのコンビニがいいよ～。」

よっぽど出かけたいらしい。

俺は仕事に行くまでの時間、Aと家でのんびり過ごしたいってのに。

「そんなに外、出たいの？」

若干、不機嫌になった俺は突っ掛かるように言ってしまった。

自己嫌悪、何こんなことでイライラしてんだよ…俺。

そんな俺の様子をまったく気づいてないAは満面の笑みを向けてきた。

くそっ

そんな顔されたら反対できないよ。

貴「うんっ出かけたい！！玄樹と一緒に！」

玄「～～～っ！！！」

おいっ！！

反則でしょ、それ！！

貴「ヤダ？案内してよー。」

玄「いいよ、一緒に行こう。」

こんなの俺らしくないな。

普段の俺を知る人達には絶対見せられないな。

それでも、

Aが俺の傍にいるというのなら

笑ってくれるのなら

こんな俺も悪くない。

昨日の雨が嘘のように、今日は朝から晴れていた。

昼飯の調達を兼ねて、俺たちは昼を少しすぎたこの時間、コンビニへと歩いていた。

もちろんマンションから少し離れたコンビニだ。

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