壁越しの恋人 【kzh】

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少々ショッキングな表現あり

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お母さんは葛葉くんを指さしていた。







その指はわなわなと震えていて、顔は真っ青。






いつだったか連れ去られた日のように、首を掴まれて外へ出される。



爪が食いこんで、血が出てきた。痛い、苦しい、辛い。









痛い。













なんで私ばっかりこんな目に遭うの？









なんで？




なんで




なんで私だけ？







『……………………………』











『お母さん』










『………私は葛葉くんに会いたい、よ』









.










今まで我慢してきた言葉を、震えながら呟く。





言いたいことを率直に伝えたのは、いつぶりだっただろうか。





思い出すことなんてできない。










「そっか、ごめんね、A。これでもお母さんはあなたを大好きなのよ」









なんて言ってくれたら、どれだけ良かっただろうか。







" 葛葉くん "






その言葉を耳で拾った瞬間から、首を掴む手に力が込められていく。




どんどん食いこんで、どんどん血が出てくる。








あぁ、またか。




またさっきと同じ感覚がくる。







さっきみたいに視界がよろめいて、少しずつ傾いていく。







ごめんね、葛葉くん、お母さん。




私は迷惑をかけてばっかりだ＿＿＿＿＿＿＿＿












.











.














.













次に目が覚めたのは、また見慣れない天井だった。






でも、さっきはあった隣の温もりはもう消えている。





……ん？




窓の外がやけに明るい。


まるで昼間のようだ。









私が倒れてから、何時間経った……………？







今の時刻を確認しようとして、近くにあったリモコンを引っ掴み電源ボタンを力強く押す。





テレビがついた。



なんだか久しぶりな感覚のニュース番組。









左上には





6/26 15：18





の文字。




あ、れ？私、1ヶ月以上寝てた、？






衝撃の事実に戸惑いが隠せない。




呆然とテレビを見つめていた。










そんな私の耳に届いた声は














.














.














.













【人体を利用した記憶書き換えの実験をしたことにより逮捕されたA容疑者が、禁錮72年の判決を下されました】

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