壁越しの恋人 【kzh】

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翌日。



いつもよりも気分が乗らない授業にお弁当。




いつもならもっと楽しかったはずの学校。




いつもなら、いつもなら………






そう言って、比べては勝手に落ち込む自分にも嫌気がさす。




楽しくないはずなのに、時間が過ぎるのはとても早い。





隣の席の机に入れっぱなしのファイル。



ごめんね、またいつか。






.






帰り道を歩いていると、ふと考える。




こっちの道を通ったら、今までの道を通るよりも何分も早い。





帰り道から消えた大きな館では、今頃私が来るのを待ってくれているだろうか。


なんて、そんな都合のいいことあるはずがないのに。









『………ただいま』




ボソリと呟く。リビングには入ることなく階段を上ろうとした。







「……………ちょっとA、スマホ寄越しなさい」






『……うん』






考える気力すらもない。



葛葉くんたちと喋ることは、あんなに楽しかったんだな。




呑気にそんなことを考えるが、考えるだけ無駄なのはもう充分なほどわかっていた。








ふらつく足で階段を上り、ベッドの上に腰掛ける。





はぁ、勉強するか。


勉強、しなきゃ……








.











.











目が覚めると、空は真っ青に晴れ渡っている。





どうやら、あのまま眠ってしまっていたようだ。




しわくちゃの制服、ボサボサの髪の毛、疲れ切った顔。



全てに見ないふりをして、リビングへとよろめきながら歩いた。





どうやら、お母さんはもう仕事へ行ったみたい。



そのことに少し安心して、風呂を済ませてから身だしなみを整えた。




朝ごはんは食べてないけど、まぁいっか。







働かない頭と固まった足を無理やり動かす。




学校までの道のりがこんなに遠く感じるのは、今日が初めてだった。

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