好きだ6 ページ7
俺はあの後、何事もなかったように彼女に首を振り横に並んだ。
(俺のバカでかい声も届かねぇのか、、、。)
そう思うと何だか切なくなった。
切ないなんて気持ち無縁だった俺は戸惑う。
このモヤモヤの処理の仕方を誰か教えてくれ。
"一君は何か部活をしているの??"
突然横を向きノートを見せてきた彼女。
彼女の文字の下に"バレー"と書いた。
"そっか!背高いもんね!最初、徹君と2人で並んでるときビックリしちゃった。"
確かに。
バレー部の中では俺は決して大きい方ではないが180近い俺とムカつくが180を余裕で超えてる及川が並ぶと普通はビビるのかもしれない。
"望月さんは大学で何してるんすか?"
俺からも何か質問した方が良いのかと頑張って絞り出してみる。
彼女は俺の質問に嬉しそうに
"唄でいいよ?私も一君って呼んじゃってるし。学校ではね、絵描いてるの。景色とか人物とか色々。"
"絵描くの好きなんすか?"
"うん。耳の聞こえない私にとって目に見えるものが全てだから。それを少しでも残しておきたいんだ。"
俺はきっと彼女のその感覚を理解することは一生できない。
でも理解したいと思った。
"人ってどんなの描くんすか?"
"別に敬語じゃなくていいよ。人は滅多に描かないかな。モデルになってくれる人って少ないし、私話せないからなかなか頼めないし。ほんとはもっと描きたいんだけどね。"
彼女は諦めているようにふと笑った。
"話せないから"その言葉は想像以上に重いのかもしれない。
彼女が絵を描くのが好きなのも人と話さなくて済むからという理由もある気がした。
"バレー、見に来るか?"
その文字に彼女がパッと顔を上げる。
"迷惑じゃない?"
"うちはいつもギャラリーいるから大丈夫だ。"
"そんなに凄いの?!"
"ほぼ及川のファン"
彼女がフフッと笑う。
"徹君カッコイイもんね。あんなに綺麗な顔した子初めて見た。"
及川を褒める彼女に少しムッとした。
こんなのいつものことなのに。
"でも私は一君みたいなしっかり男の子って分かる顔が好きだな。骨格がしっかりしてて描くのが楽しい。"
絵の話をしてるのに、及川より好きと言われたのは初めてで、それは想像以上に嬉しいものだった。
"変わったやつ。"
そう書いた言葉は最大級の照れ隠し。
さっきまで感じていた彼女と俺を隔てる高い壁は
いつの間にか消えた気がした。
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作者名:晴雛 | 作成日時:2017年12月3日 4時