小さな恋物語

約束　creep 尾崎 ページ10

「別れよう」

「え...？」


それは、あまりに突然のことだった

彼の口から放たれた言葉に、私の視界は涙に潤む


「そんな...いきなり、どうして？」

「好きって気持ちってさ。冷めちゃうんだよね」

「もう、私のこと、好きじゃないってこと？」

「簡単に言うと、そうだね」


彼は、私の目から溢れ出す涙を見ても、平然としていた

前までは、私が泣けば、優しく抱き締めてくれていたのに


「嫌だよ。約束したじゃん。ずっと一緒に居るって、言ったじゃん」

「そんなこと、言ったっけ」

「言ったよ。祐介の方から、言ったよ」

「Aの勘違いとかじゃなくて？」


冷たい彼の言葉に、私の胸はキュッと嫌な音を立てて締め付けられる

好きじゃなくなったら、こんなに態度が変わるものなの？


「好きだった。確かに、Aのことは好きだったよ。
　でもさ。これ以上一緒に居たって...何も進展しないよ」

「進展なんてしなくていいから...一緒に居たいよ...」

「わかってよ」


彼の鋭いまなざしは、涙をこらえているように見えた

気のせい、だろうか


「...うん。わかった。元気でね」


涙をぬぐい、笑顔を作る


「...うん。Aも、元気でね」


彼も、少し笑った


私は、今日

大好きな人と、お別れした

最後に、彼に

『幸せになってね』という言葉を伝えて


彼は、笑って

『それ、約束？』なんて

少しおどけたように言った


だから私は、笑顔でうなずいて言った


「破ったら、針億本だから」





「針多いね」

「これくらいじゃないと守らないでしょ」

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