小さな恋物語

じゃあね kyuuso ヨコタ ページ39

ヨコタside





俺を好きな君も


君を好きな俺も


もう、どこにも居なかった



だから、今日


俺達は、恋人を辞める





「シンノスケ」

「何？」

「また遊ぼな」

「...うん」





死ぬほど愛した君は


あの日の朝焼けの中に紛れて消えた




死ぬほど愛された俺も


あの日の夕焼けに飲み込まれていった




あんなに好きだったのに


今では、こんなにも冷めてしまっていて


君が飲んでいた甘いコーヒーが熱くて、舌を火傷して笑っていたあの頃が懐かしくなった





「体、気ぃ付けや。無理せんようにな」

「うん...そっちもな」

「うん」





どれだけ手を伸ばしても、楽しかったあの頃の気持ちには届かなくて


手のひらに残る乾いた空気に安心していた





「まあ、お前と居ったら楽しかったわ。ありがとうな」

「うん。こっちこそありがとう」

「うん」





今日からこいつも思い出になるんだな


そう思うと、何だか急に淋しくなった





「じゃあ...」

「うん。...じゃあな」





玄関まで彼女を見送って、閉まったドアの前で立ち尽くした


部屋に戻ったら、机の上に彼女に貸していた合鍵が置いてあって


それを見て、またちょっと淋しくなった




これでお別れなんやって思って


瞼に溜めていた涙を、1粒零した









「...また、っていつやねん」

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)

←朝日 creep 尾崎

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す