【仁王雅治】恋するペテン師は苦難中【テニスの王子様】 (ページ3)

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3年C組…となると我らがテニス部部長、幸村精市と同じクラスか。

彼女の言葉で、幸村の優しげな笑顔が思い出されつつ、俺は口を開く。

「…俺は、仁王雅治。お前さんの隣のクラス、3年B組じゃ」

「そうなんですか、隣のクラスの人だったんですね。藪から棒にいきなり質問しちゃってごめんなさい、同じクラスになった事が無かったのに見覚えがある顔してるなって思って…」

「あぁ、構わんよ。俺も見覚えのある顔じゃなーって思ってたきに」

俺がそう言えば、彼女はそうですか、と言ってくすりと微笑んだ。

よく見れば、彼女は腕一杯にテニスボールを抱えている。

「…お前さん、そんなにテニスボールなんか持って何しとるんじゃ？」

如何にも誠実そうな見た目である彼女がまさかテニスボールを部室から盗むだなんて事は有り得ないと思うが、疑いの視線を彼女に注ぐ。

彼女はその視線に気づくことなく、これの事ですか？と言って笑った。

「これは、学校中に落ちてたテニスボールを集めてたんです」

「…はぁ？学校中に落ちてたテニスボール？」

てっきり盗み以外の理由でテニスボールをこんなに所持しているとは思っていなかった為、思わずオウム返しに返答してしまう。

「はい。本当なら真っ直ぐ家に帰るつもりだったんですが…木の上の枝にボールが引っかかってるのを見つけて。」

「木の上の枝って…まさかお前、取りに行ったんか！？」

見た目とは反さないあまりの彼女のパワフルさに驚く俺に対して、彼女は怖いほど純粋な笑顔で頷く。

「はい、勿論！その後、辺りを見渡してみたら、結構色んなところにテニスボールが落ちてるものだから…探すのが楽しくて。」

「…つまり、落ちてるテニスボールを探しているうちにこんな量になって、こんな時間になったっちゅー訳か」

俺がそうため息をつくと、彼女はあはは…と苦笑いをして、ボールを軽く抱え直した。

「…そういう訳です。すいません、驚かしちゃって。私はもう行きますね」

「ちょ、ちょぉ待ちんしゃい。お前さん、そんな大荷物で、しかもこんな時間からまだどこへ行くつもりじゃ」

「どこって…テニス部の部室です。こんなに集めたのに、返さなかったら今まで集めた意味がないじゃないですか」

そう得意気に笑う彼女に、俺は謎の好奇心を持った。

…こんな奴、今まであったことが無い。

「…そーか。じゃあ俺も暇やけん、一緒に行かせてもらってもええか？」

そう聞けば、彼女は笑顔ではい！と答えたのであった。