【仁王雅治】恋するペテン師は苦難中【テニスの王子様】 (ページ15)

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#15 ページ15

「仁王〜、今から部活行くんだろぃ？なら一緒に行こうぜぃ」

終礼が済み欠伸をしていると、丸井がそう声をかけてきた為、俺はおん、とだけ相槌を打って立ち上がり、彼の横に並んで歩き出した。

廊下に溢れる帰宅ラッシュの者と部活に向かう者の人波を押し分ける様に進んでいくと、同じ様に波を見て困った顔をしている柳生と真田の姿を見つけて、俺はひらひらと手を振った。

「やーぎゅ、真田」

「ん？…あぁ、仁王と丸井か」

「おや、今から部室に向かわれるんですか？良かったら一緒に行きましょう」

人当たりの良い笑みを浮かべた柳生の提案に、皆が軽く頷く。

「おん。…と言いたいところやけど、一緒に行くも何も、人多すぎやせんか。こんな人じゃ動けもしないのぅ」

「そうですね…私と真田君も、この人の多さで動けずじまいでして。先程からここで5分程雑談をして時間を潰していたのですが、まだこの有様の様で」

「うむ…しかし、部活はそろそろ始まってしまう。早く向かわねばならんのは重々承知なのだが、しかし…」

そう言い、顔を顰めた真田の背後から…

｢…そうだな、このまま立ち往生していると、支度が済まずに部活が開始する確率83%だ｣

と、如何にも冷静さが感じ取れる落ち着いた声が聞こえてきた。

｢…お、柳！それに、ジャッカル、幸村君も｣

丸井の声と共に振り向けば、そこには、いつもの見慣れたメンツが立っていた。

｢おぉ、皆。珍しいな、こんな所で集まるなんて｣
｢フフ、勢揃いだね｣

そう微笑む幸村を見て、高宮の恋愛事情を思い出した俺はついぷいと彼から目を逸らしてしまう。

｢…仁王？どうかしたのか｣

仁王の反応に、心配げにも、訝しげにも取れる様に眉を顰めた柳の言葉の返事を、仁王は溜息で返した。

｢…はぁ、相変わらず参謀は目が鋭くて困るのぅ。何にもないナリ…ま、何かあったとしても教えんけどな｣

｢高宮の事か？｣

…一流のペテン師の本音をズバリと言い当ててくる所は、流石全国レベルのテニス部を支える参謀と言ったところか。

｢…さぁのぅ｣

｢右目の眼球が2.2mm左に動いた…つまりお前は今、目を逸らしたな？嘘をついている確率97%｣

｢…本当、勘弁して欲しいんじゃけどそういうの｣

｢何、お前が嘘をつくからだろう｣

そう言われてしまえばお手上げだ。プリ、と言葉を漏らすと俺は参謀から離れる様に歩を早めた。

＿まだ、バレて、暴かれてはなるものか。
自分さえ理解に苦しむ、このむず痒い感情の正体を。