【仁王雅治】恋するペテン師は苦難中【テニスの王子様】 (ページ14)

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#14 ページ14

…それは2日前くらいの事だった。

帰り道、ふと顔を上げれば、木の枝の所にテニスボールが挟まっているのが見え、木に登ってテニスボールを拾った。

それをテニス部の部室に返しに行こうとすれば、校舎のあちこちに幾多ものボールが散乱しており、全て集め終わった頃には日が暮れてしまっていて。

＿そんな時に偶然出会った、仁王雅治君という同級生。

彼は少し周りの人とは変わっていて、でも良い人だという事に間違いはなかった。

ボールを持ってくれたり、職員室に部室の鍵を返してくれたり。

不思議だけど、良い人だった。

…そんな人に、また俺と話してくれと言われた。

あの時はびっくりしてまともな返事はできなかったけれど、とても嬉しくて。

今日も購買部の所で会う事が出来たし、教室で一緒にお昼ご飯も食べれたし。

もっと仲良くなれたらいいな＿＿＿

「高宮？」

「わ、わぁ！柳君！」

廊下の窓際で考え事をしていた為、突然横から声を掛けられ肩を跳ねさせれば、いつからか横にいた柳君はくすりと口に弧を描いた。

「突然声をかけてすまない」

そう言って微笑む柳君と私は、同じ生徒会として1年の頃から今迄の約三年間、共に活動している。
最初はお互い話すのに緊張していたけど、3年生ともなれば、お互い友達以上と呼べる程には仲が良いと思っている。

「…ところで、先程考え事をしていた様だが」

「あ、うん、そうなの。つい最近親しくなった子が居てね。その子ともっと仲良くなれたらなって思ってて」

「…ほう、そうか。それは良かったな」

「うん！…あ、確かその人もテニス部だから同じ部活じゃないかな。仁王雅治君って言うんだけど」

「あぁ、仁王か。お前の言う通り、同じテニス部て、且つレギュラー同士だから知っているぞ」

そんな身のない会話をしながら、休憩時間を共に過ごす。

「そう言えば、精市とお前はまた同じクラスだった様だな。どうだ、進展の程は」

「…全然進展してない…大体クラスの女の子に囲まれてて、自分からも話しかけにいけないし」

「何、焦らなくても大丈夫だ。また俺が精市と昼御飯の約束でも取り付けておこう」

「…本当！？いつも有難う、柳君」

礼を言われる程の事はしていないぞ、と言う柳君と話を進めながら、私はまた仁王君の事を考えていた。

「…ほんと、不思議な人」

「？何の話だ？」

「いや、こっちの話だよ」

…彼に抱く、好奇心の様なもやもやとした気持ちに、私はまだ気付かないでいるのであった。