身内贔屓 (ページ6)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:11,172 hit

6 ページ6

「でね、喋ってるうちに楽しくなっちゃって、そしたら今度ライブ見にこやん？って誘ってもらえた」

「へぇ。誰なん、その誘ってくれはった芸人」

「えっとなー、たしか、、」

私は芸人さんにそんなに詳しいわけじゃない。お笑いは好きだけども、人の顔と名前を一致させるのが苦手なこともあって、そんなに芸人さん全員を覚えられているわけじゃない。

森田さんと仲良くなってからいろいろな芸人さんと会う機会が増えたんだけど、その分誰に何を言われたかがわからなくなってしまうことがある。

だからスマホを取り出してメモを開く。
たしか誘ってもらったときに忘れないようにメモしたはず。

「あ、そやそや。見取り図の盛山さんや」

「盛山ぁ？！うそやん」

兄貴が大声を出して驚いた。周りの人が何事かと少し視線をこっちに向ける。

「なんで盛山が事務所におんねん。てか、あいつらライブやっとんの大阪やろ。」

「それが東京で数ステ出るらしいんよ。そん時に見にこーへん？言われて。それ、6月の頭の公演の夜の部、なんやけど。行ってもええ？」

「行く気しかないやんけ。‥‥しゃーないな、ええよ」

「やった！！兄貴最高」

うひょーい、と喜びのままにはしゃぐと兄貴は少し笑いながらそのかわり、と言った。

「帰りは連絡しいや。迎えに行くから」

「えっ」

え！と口を手で抑える。だって、あの兄貴が迎えに行くからとか、言うから。
仕事以外はめっきりゴルフと女で夜中に出かけることもしばしばあり基本私が何してても気にしない兄貴が、そんなん言うなんて。

「なんやねん。そりゃ迎えに行くよ。近場ならまだしも劇場遠いんやし。それに見取り図にも挨拶しとかないあかんやろ。うちの妹、誘ってくれてありがとうございます、て。」

とてもとても真っ当な理由。なんか急に兄貴がすごく真っ当な大人に見えてきた。

「あ、盛山さんとはね、LINEも交換した」

「うそやろ、、お前そんな行動派やったっけ」

ほら、盛山さん。と。ラインの画面を見せると兄貴はずいっと前のめりに画面を覗き込む。

「‥‥‥ほんで、めちゃくちゃ会話しとるやん」

「やって、盛山さん優しいし面白いんやもん。今めちゃくちゃ忙しいはずなんにライン送ってくれはるの、優しい以外の何者でもないやろ」

「‥まぁ、お前のこと気に入っとるんやろ。あいつ、昔妹欲しい言うてたし、お前のこと可愛くてしゃーないんやろうな」