49Monster.黄色い魔法使い ページ11
S
「センラさん」
呼びかけてきたのは悪魔
「ずっと探してるの、これでしょ」
そう言ったいるみのちゃんから1冊の本を渡される
「……この本に、僕のことが書いてあるん?」
この本に自分の話が書いてあるのか、いささか疑問ではあるが
彼女は悪魔のクセして嘘は言わない
「センラさん自身のこと…ではあるけど。思い出せればわかるよ」
なんとなくモヤモヤする答えが返って来て、疑いの目を向ける
まぁ読んでよ。と促され本を開く
そこには、絶滅した種族について書かれていた
魔法使いだけど、正確には少し違うらしい
やまだは魔法使いだったよな…?
一括りに呼ばれてる、か
……この種族に、僕はなんの関係があるのだろう?
読み進めると、とある文章に目が止まる
「ただ1人を遺して、絶滅をした……?」
矛盾してる
1人いるなら、絶滅とは言わない
なぜそんな矛盾したことが書いてあるのだろう
ぐるぐる考えていると、ふと頭の霧が晴れるように脳内でなにかを見る
……これは、誰?
黄色い髪…顔立ち…僕にそっくりで……
この女性は?隣にいる男性は?向かいにいる女性は?
「……わからない」
僕はこの人達を知らない
知らない――
「知ってるよ。センラさんのよく知る人物だよ」
ちゃんと思い出して
そんなこと言われても…
……あれ
突然脳内に浮かぶのは、大きな火
大きな火事
これは……
あれ、これ…この、火事…
なんで、この人は僕の名前を焦って叫ぶんだろう
そう言って何かを唱える女性
……女性
違う
知ってる
僕はこの人を知ってる
この人も、僕を知ってる
「あぁ…いつになるかなー。ねぇセンラ」
「おねえ、ちゃん……」
分厚い本が、俺の涙と一緒に落ちる音がした
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作者名:桜沢 彩咲 | 作者ホームページ:
作成日時:2024年1月28日 5時