35：甘い優しさと洗脳【影片みか】 ページ37
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それはある日唐突にやってきた。
「おかしいんじゃないの？」
今まで普通だと思っていたことが否定され、挙句私は異端者と見なされハブられた。
＿＿たった一言で人の人生をこうも転落させることができるのか。
言霊というのはすごいと皮肉った半分、本当に驚いていた。
私が一体何をしたというのだろう。
頼まれた仕事を引き受けていただけ。掃除の代わりや学級委員の押し付けとか。
断るのも面倒だし面子もあるからと引き受けていたのに、「自主性がない」と否定された。
そうしたのは貴女たちでしょうに。一体何を言っているのだか。
自分も周りもバカバカしすぎて笑えてきた。
そんなときに、彼に出会った。
「あんなぁ、元気ないときは飴ちゃん舐めぇや。甘くて美味しくて癒されるで」
そう言って、「お気に入り」の赤色の包の飴をくれた。
口に含めばイチゴの味。
なんでだろう、涙が出てきた。
ぽろぽろと鱗が剥がれるみたいにこぼれる涙と一緒に、今までの愚痴もこぼれた。
名前も性格も素性も年齢も何も知らない人に、初めて私の本音をこぼした。
(ああ、私こんなに苦しかったんだ…)
そして初めて、自分の本音を知った。
すべて話終わったあと、彼は微笑んでいた。
「おれも、目の色左右ちゃうやろ？ このことで色々あってん」
「色々…」
「せやから気持ち分からなくもないで。辛いよなあ。疲れてばっかよなあ」
よしよしと頭を撫でてくれる。
お母さん猫みたいにあたたかくて、安心感でいっぱいになった。
だが、あたたかい手つきとは裏腹に、彼の瞳は危なっかしく光っていた。
「でもおれはお師さんに救われたんよ」
「お師さん？」
「んん、おれ頭悪いからよう言われへんけど、とにかくすごいんよ！ 神様みたいなんやで！」
「神様みたいな…」
そんな人なら、私のことも救ってくれないかな。
表情に出ていたのか、その人はにっこりと口元に弧を描いた。
「大丈夫、綺麗な顔しとるし、きっとお師さんも気に入ってくれるわ」
さ、行こや。
そう言って強引に引かれる手。崩れたバランスはさり気なく支えられた。
拒否権なんてないと言わんばかりに私を連れていこうとするので、私も抵抗ができなかった。
自主性がない。的を射ていたのだ。
でも、助けてくれるなら今更悪魔でもいい。
(何にでも縋ってやる…っ)
結末は大団円か悲劇か。
物語は始まったばかりであった。
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36：恋はヤケドをする前に【朔間凛月】→←34：パン屋の天使【朱桜司】
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くるみ - こんにちは！レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです！これからも頑張ってください！ (2019年6月27日 13時) (
レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (2019年6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します！レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います！応援してるので頑張ってください！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです！更新いつもありがとうございます…！これからも頑張ってください！！ (2019年5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：adora | 作者ホームページ：
作成日時：2019年4月24日 0時
