No.6 『疑念の朝:荼毘』 ページ9
カーテンを越えて薄くさしこんできた太陽の光で俺は目をさました。
体を起こすと自分のものではない暖かく柔らかい何かが腰に絡みついていた。
Aの腕だった。
腕をほどいて、寝苦しくないように整えてやる。
そうしても、Aが目をさます様子はなく、安心しきった様子で眠っている。
「……うにゃ」
猫か、お前は……。
そう思うと同時に、
こんな猫も悪くないかもな
と、思ってしまう。
らしくない思考に、思わず自分のことながら苦笑した。
朝で頭が働いてないからだ。こんなことを思うのは。
そんな笑えないほどあまーい、あまい……砂糖漬けになっているんじゃないかというくらい、あまったるい俺の考えは直後のAの言葉であっさりと消えた。
「……しょ…ーと……く…ん？」
ゆるんでいた口元が一気に引き締まる。冷水を浴びせられた気がした。
「ん……あれ？荼毘、おはよ」
まだ眠いのか、目をこすっているAの肩を掴み揺すぶる。
「なに？どうしたの？」
「お前……またアイツと会ったのか」
Aは驚いた顔をしていたが、こくりと俺の問いにうなずいた。
「アイツとは終わったんじゃなかったのか！？」
俺の肩を掴む力が強いからか、Aは顔を歪めている。
「終わるどころか……はじまってすらいないよ。荼毘だって知ってるでしょう」
そう、Aと会話した二度目のとき、直接Aの口からアイツとAの間にあった話は全て聞いていた。
それでも俺といるときにAの口からアイツの名前が出てくるのは許せない、そう思ってしまう。
この思いはおかしい。
俺とAの関係はそんなものではないはずなのに。
No.7 『過去2=終わり:轟焦凍』夢主視点→←※No.5 『夜のデート:荼毘』 続き 夢主視点
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作者名：パンプキン | 作者ホームページ：http://uranai.
作成日時：2018年1月8日 17時
