No.16『独り言』 夢主視点 ページ19
2つ角を曲がって路地に入る。
その際に周囲を必ず確認。
怪しい者がいなければそのまま進んで突き当たりまで行く。
そこで上下左右を向き、もう一度周囲を確認。
問題がないならば、そこであたしはヴィラン連合から連絡用に与えられているスマホを取りだし、それにつけている鍵を使って右側の壁と同化しかけ、更には存在を忘れられかけている扉を開ける。
そして、鍵を使って扉が開かないように閉めたらそこでやっとあたしは一息つける。
いつも、こうしている瞬間は自分が人々から忌み嫌われ、世間の英雄様……『ヒーロー』から追われる存在、全ての悪の象徴、そんな紛れもない『ヴィラン』なのだと再認識する。
「はあ……」
閉めた扉に寄りかかりながら、扉越しに表の様子を伺う。
……何の音もしてこない。もう心配いらないか？
しかし、あたしは何を心配するというのだろう？
世間にヴィランだとばれること？
別にあたしにとってそんなこと大した問題じゃない。
あたしが死のうが生きようが大半の人間にとってどうでもいいことだ。
あたしがやっている警察の仕事だって代わりなんかいくらでもいる。別にあたしである必要なんて全くない。
ヴィラン連合の仕事だってそう。
トガちゃんとか、そこまで訳ありの奴じゃなければ簡単に警察には潜り込める。
公務員には違いないけど、世間の目は全て『ヒーロー』に集まっているから『ヴィラン受け取り係』の警察になりたがる子供なんて稀だ。
結果、何らかの事情で『ヒーロー』になる夢を諦めなくてはならなかった夢に敗れた大人が警察には集まる。
『ヴィラン受け取り係』の名に相応しい連中だらけだ。
そんな現実を見つづければ、余程のバカでもなければ、『ヴィラン』が否定されず、世間に受け入れられつつある理由もわかるだろう。
そう、世の中はキレイごとが全てではないのだから。
こんな風にヴィランに協力しているあたしみたいなのがいるようにね。
壁に預けていた体を立て直し、手に持ったスマホを操作する。
このスマホを渡されたときにはもう登録されていた１つしかない連絡先を選択し、電話をかける。
プルルルッ
プルルルッ
プルルルッ
暗い廃ビルの部屋の中にコール音とあたしの呼吸の音だけが虚しく響く。
三回電話でコール音を鳴らすのは、あたしが今いる場所に黒霧さんに迎えに来てほしいときの合図だった。
そう、決まっていた。
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作者名：パンプキン | 作者ホームページ：http://uranai.
作成日時：2018年1月8日 17時
