No.15『再燃:轟』 夢主視点の続き ページ18
あたしの態度を見てもまだ、彼はあたしの隣に居座り続けている。
ああ、もうはやくどっか行ってよ
そう思った直後、彼の手があたしの髪に突然触れた。
「！？」
「すまねえ……悪い」
思いきり睨んでやろうと思ったのに、やった彼の方がが戸惑っているのを見てそんな気持ちは削がれた。
「いいですよ……酔ってるんでしょう？」
そう言い、水の入ったコップを差し出してやる。
酒の席でアクシデントが起こるのはしょうがないことだ。
これが大人の対応ってやつだろう。
彼がコップを受けとると、カチリと左手の薬指にはまっている指輪が音をたてた。
全く……家族がいるなら、遅くまで飲んで酔っぱらってないではやく家に帰れ！
一緒に暮らしている人間のいない身としてわあたしはそう思ってしまう。
……弱冠、あたしの個人的なひがみが入っていることは否定できない。
そんなあたしの様子にはお構いなしに彼はしゃべり続ける。
話している内に
あれ？あたしが好きだったのはこんな人だったっけ？
と思う。
なんたって年をとったとあたしが言えば
「まだまだだろ」
なんて返してくるんだから。
彼としては、女性に言うべき
「お若いですね」
と、同じような感覚でフォーマット通り、常識的に言ったつもりなんだろうけど。
でも、それはあたしみたいなまだ結婚していない女性にとってはそうではない。
男と違って女が自分の子を持てる機会と時間は少ない。
だから、若いからと言って、残された時間が長い訳ではない。
それくらいわかってよ！
と、高校生の頃みたいなことを思ってしまう。
……自分で思っているより、酔っているかもしれない。気をつけないと。
飲み会が終わった。うーん、やっぱり飲み過ぎたかもしれないなあ。
少し足がふらつく。
「送っていこうか？」
と、彼に声をかけられた。
はい？あんた、不貞を疑われるようなこと言ってんじゃないよ。
と、言いかけもう少しオブラートに包んだ言い方に変える。
「……自分の指についてるのと同じのつけてる人に疑われるようなことするもんじゃないよ」
「……わかってたのか」
そんな堂々と付けてて気づかないわけあるか！それに気づかないなんてどんな鈍い奴だ。
……ああそうか。気づいてても彼なら、とか思う人はいるのかもね。
でも、あたしは違う。
「奥さん、大切にしなよ。じゃあね」
彼に背を向け歩き出す。
ヴィラン連合の奴等には悪いけどあたしが飲みなおすのに付き合ってもらおう。
そう、心の中で決めて。
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作者名：パンプキン | 作者ホームページ：http://uranai.
作成日時：2018年1月8日 17時
