No.11『再会:轟焦凍』 ページ14
珍しく、酒に酔っていた。
警察とヒーローが協力してのヴィランの大捕物が終わった後で気が大きくなっていたからかもしれない。
タバコ臭い居酒屋の中で適当に絡んでくる酔っぱらいの警官やヒーローの相手をしながら少し離れた位置に座っているAの方を見ていた。
Aは上司らしき人物の話を静かに聞きながら酒を飲んでいる。
ふと、目が合った気がした。
もう一度、Aの方を視線を向けてみたが、人と話すのに夢中のようだった。
やはり、俺の気のせいだったのだろうか？
Aが今回の作戦に警察として参加していることを俺は現場に行くまで知らなかった。
昔は仲のいい幼馴染みだったはずなのに俺には高校以来、Aと会話した記憶がなかった。
だから、俺は最近までAが警察官になっていることを知らなかった。
『ヴィラン受けとり係』という皮肉な呼び名のある警察ではなく、なんとなくのイメージだが俺はAは堅実な企業に勤めているのだろうと思っていた。
「久しぶりだな。A」
酒に酔った奴等が席を移動しだしたのに合わせ、Aの横に移動し、話しかける。
「……そうですね。轟さん」
なぜ、そんな他人行儀な口をきくのだろうか。
俺といるのがAは嫌なのだろうか。目を合わせようともしない。
Aが背を向けているから、俺にはAの真っ直ぐな髪しか見えない。
学生の頃と変わらず、マメな性格らしく、髪はツヤツヤと輝いている。
綺麗だ
そう思うと同時にAの髪へと手を伸ばし触れていた。
酒で火照った手に、吸いつくような手触りの黒髪は冷たくて心地がよかった。
「ッ……なにしてるんですか」
一瞬、戸惑った表情をしたAに睨まれ慌てて手を離す。
手を離すのが少し名残惜しかった。
「すまねえ、悪い……」
Aよりも自分自身の行動に俺は驚いていた。
俺はもう、あいつ以外にこんな風に触れてはいけないのに。
「……はぁ」
Aは溜め息をつき、俺に水の入ったコップを差し出す。
「いいですよ、どうせ、酔ってるんでしょう」
「あ、ああ。そうだな……」
Aから差し出された水を受けとるとカツン、と音が鳴ったことで少し目がさめた気がした。
だか、冷たい水を飲み干してもふっと湧いてきた、暑いような、体がムズムズするような感覚はなくならない。
その感覚から気をそらすようにAに話しかけると、相変わらずAは俺の方を見ようとしないが今度は一応、会話が成立した。
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作者名：パンプキン | 作者ホームページ：http://uranai.
作成日時：2018年1月8日 17時
