26* ページ44
、
「コーヒーにメープルシロップは入れるかい？」
あの後なんとかカナダをなだめ、元気を
取り戻した彼とクマ二郎さんとでブレイクタイム。
「はい、勿論！」
カナダの名物であるメープルシロップを、
コーヒーの中にたくさん入れてもらう。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
カナダが差し出してくれたカップを受け取ると
じんわり温かな温度が手に伝わってきた。
たちのぼる湯気と共に、コーヒーとシロップの
良い香りが鼻孔を擽る。ゆっくりカップを傾けて一口飲んだ。
コーヒー独特の苦味がメープルシロップで中和されていて、飲みやすい。
「わぁ、美味しい…」
ほう、と安心するようなため息がこぼれる。
「Aガ気ニ入ッテクレテ良カッタ」
「うん、良かった。いろいろ話して時間経っちゃったから、冷めてない？」
「いいえ、丁度いいですよ？熱すぎず冷たすぎずで。」
適温です、と微笑むと、カナダもつられて顔を綻ばせた。
「君は、とっても優しいね。」
「え？」
いきなり彼の声のトーンが、少し低くなったので視線をコーヒーからカナダへと移す。
そのときの彼の顔は、切なそうな、嬉しそうな、複雑なものだった。
「僕は、昔から居ても気づかれないことが多かったんだ。声も小さいし自己主張が強くもない。名前だって覚えて貰えなくてアメリカと
間違えられて。……でもそういうこと、嫌だったけど全部諦めてた。きっと、これからもそれは変わらないと思ったから。」
まるで溜まったものを全て吐き出すように、
ただカップの水面を見つめて言の葉を紡ぐ彼は
その口を止めようとはしない。
「………でもね、」
不意にカナダが顔を上げた。
「君はちゃんと僕を見てくれた。ちゃんと気付いてくれた。それが堪らなく嬉しいんだよ。」
そう言って嬉しそうに細められた彼のブルーの瞳は、綺麗な光を湛えていた。
「……そんな、私、大したことしてないです。でもカナダさんにそう言っていただけて、私も嬉しい。…あと、大丈夫ですよ。カナダさんは温和で優しい人柄を持ってますから、みんな
すぐ、カナダさんの良いところに気付きます。私が保証します。」
「………うん、やっぱり君は優しいね。」
「…いえ、」
「ありがとう、本当に。……あとね、もう影が薄くたっていいんだ。」
それに続く言葉は、
(何処か不器用で、)そして甘さを含んでいた。
『もし僕が誰にも気付かれなくても、君が僕を見つけてくれるから。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 373人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヘタリア」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：タスク | 作成日時：2015年2月13日 22時
