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26*何処か不器用で、 ページ41





「………は、」


今しがた言われた言葉が理解できなかった。
否、全くもって信じることができなかったのだ。



それでも、ふわりと香る落ち着く匂いに
包まれて、頬を艶やかな黒髪が掠めるから、
否応なしにこれが現実であることを突きつけてくる。




「…………菊さん、今の、え、どういう、」


ようやく振り絞った声は戸惑いを隠しきれて
いなかった。




なぜならこの20年間、恋愛などというものとは
全く縁がない暮らしをしてきたのだ。

無論、モテたことなどない。
告白はしたこともされたこともない。

そんな自分に、いきなりイケメンから
想いを告げられる、など、

なんて少女漫画的展開!といつも憧れていたのだが、実際に自分の身に起こってみるとこれが違った。


悲しいことに恋愛経験0なわたしには、どんな
対応をするべきか、その言葉を信じて良いのかさえ分からないのだから。


すると、それを全て見透かすかのように
菊は告げた。


「……本気ですよ、Aさん、
………それだけです。では、お気をつけて。」


「え、ちょ、あのっ………」

一瞬、私の体を捕らえていた腕に力が篭り、
そのあとすぐに彼の体温は離れていった。


「………菊さ、あのっ」



聞きたいことや疑問はたくさんあったという
のに、それらを口に出す隙さえ与えず、
彼はそのまま人混みに紛れて去っていって
しまった。


「………え……………どうしよう。」


とは言っても、そう悠長に悩んでいる暇など
無かった。


時間が押していることに気付き、すぐに手荷物検査や身体検査を済ませ、飛行機に乗った。






遠ざかる自分の故郷の地を特に意味もなく
見つめながら、やることもないので、
思考は先程の出来事に持っていかれてしまう。



澄みわたり、見ていて清々しくなるような青空の中を、飛行機は飛んでいるというのに、


私は言い様の無いモヤモヤを抱えたまま、
アメリカへと旅立っていったのである。




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設定タグ:ヘタリア , トリップ , 逆ハー   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:タスク | 作成日時:2015年2月13日 22時

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