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「悪ぃ。…起こした？」
身体に回された暖かい腕にそっと自分の手を添わす。
「ううん。なんかめちゃくちゃすっきり目が覚めた」
大切な人の存在が、安らぎと良い眠りをもたらしてくれた。
「俺も。よく寝た〜って感じ＾＾」
「……」
やはり…同じ気持ちでいることなんて、明白。
そして。
『毎日がこんな朝だといいのに―――』
思わず閉じた瞼に力を入れる。
…首筋に当たる彼の髪がくすぐったい…
少し短くしたばかりの襟足にそっと押し当てられる唇が震えているのがわかる。
彼の腕に添えた手に気持ちを込めた。
「へっくしょぃっ」
「ほら……あなた身体がひんやりしてるよ、…布団、戻るよ」
「ん」
後ろから髪にそっと落とされる口づけを感じながら、もう一度窓の外を見た。
ぽつっ……ぽつ………
「ん？」
「んーん……雨だな…」
「そうね。ロケ、ない日でよかったね＾＾」
彼らしい現実的な意見に、ようやく気持ちがここへ戻ってきた。
「っし。
さむさむ…う〜〜〜〜〜さむっ！」
「おゎっ？！」
不意打ちのように腕の中で体を反転させ、勢いよく彼に抱きついた。
咄嗟の行動に相当に驚いたようで、両手を万歳させたまま凍りついている。
それでも
すぐにふふっと笑い声を零すと、負けじと力いっぱい抱きしめ返してきた。
「んとにもぉっ
あなたこんなに薄ペラいから、余計に寒く感じるんだよっ」
体調を壊さぬ程度に自己管理はしているが、どうしても食事は最小限に留めたい。
普段から、また基本的に身体ができているので、ちょっとのトレーニングですぐに筋肉もつく。
見るからに逞しくなるのは、好きではない。
「二人でムキムキしてたら、…エグクない？」
「エグイ…って、あなたねぇ(苦笑)」
抱き合ったままそんなことを言い合い、そのままベッドににじり寄って倒れ込んだ。
腕を出してくるのを枕にして彼に背を向けると、すかさず後ろから包み込まれる。
二人でもぞもぞ動いて、ちょうどよく納まりあった。
「はぁ〜……至福の時やねぇ♪」
「…なぁ、」
「ん〜？」
「……ん、なんでもねー」
何を言おうとしたんだろう。
察したように、彼もそれ以上追及してくることはなかった。
その代わり
「…終わったらあなたん家…いいかな？」
「おぅ」
ぽつ…ぽつぽつぽつ……
少し急ぎ足になった雨音に耳を澄ましているうちに、知らずとまた眠りに引き込まれていた。
二人の表情は穏やかで
とても静かだった。
【fin】
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作者名：tororo
| 作成日時：2014年6月1日 1時
