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「ま、さか?」

「カツオ。俺、釣った♪」

「ま、じですかぁっ?!」

まさかそこからとは思わず、…ひょっとして野菜や薬味もこの庭で作ってたりして…

と、半信半疑で目をやると

「……さすがに畑はやってねーよ」

見透かしたようにぼそっと呟き、驚いて視線を戻した櫻井にふゎっと笑ってみせた。

「…(照)」


そこから二人で、彼が手ずから捌いたカツオをあてに、ビール3缶を空けた。

先ほど見た大きな掃出しの扉の内側が店になっていて、手作りの雑貨を販売しているということ。

彼は工芸作家として、グラスや焼き物を作っていること。

大きな仕事が入る合間にそうした実用品を作るのが、楽しいこと。

そして

彼の名が大野智といい、姉と二人で店を切り盛りしていることも。

3缶の間にいろいろ話した。

『使う人の顔が想像できるから、こういうの作る方が楽しいんだ。

量産品はダメだけど(笑)』

そう言って嬉しそうに自分の作品を眺める顔は…輝いていて。

きちんとした勤めなんかしたことないから…と言って、訥々と、けれど次々と話を継げるような相槌で、興味深そうにこちらの話も聞きだして。

4缶目を開けたタイミングでやって来た女性に、昼間っから呑み過ぎ!と叱られる頃には、二人は信じられないほどの短時間で、信じられないほど深くお互いを知りあっていた。

「姉ちゃんは生け花とか造花とかやってんの」
「言い方っ(怒)

ごめんなさいね^^

フラワーアレンジメントと、プリザーブドフラワーっていって生花を加工して美しさを保つ手法があるんだけど、それを教えてます。」

余所に家庭を構える彼女がここに通って来て、店をオープンしているらしい。


その後彼に引っ張られて家に入ると、姉の為にもう一皿カツオの刺身を準備する様子を見ていた。

使い古して少し小振りになったという包丁はよく研ぎあげられている。

レトロな、キッチンではなく台所と呼ぶのが相応しいそこは、使い勝手良さそうに調えられていて。

「……こんな嫁さん、欲しいなぁ」

「ん?なんか言ったか?」

ゆっくり丁寧に腕を揮う彼に、思わず呟いていた言葉。

自分に慌て、はっきりと聞こえていないらしいことにほっとして。

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作者名:tororo | 作成日時:2014年6月1日 1時

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