★三話：その３ ページ6
愛沢茜を取り逃がした。…まあ自分の意思で逃がしたんだけどね。
「まあとりあえず、はよ追いかけようや」
蒼矢が言う。
「俺が殺すから。」
琥珀が言う。
『ほどほどにね』
先生が言う。
「ここ汚くていやだから、早く終わらせよう」
すずさんが言う。
「頑張りましょう」
蓮花ちゃんが言う。
皆、怒ってないみたいでよかった。
「とどめ、琥珀にまかせるね。私、アイツ殺れそうにない」
「わかってっし。てかハナからそのつもり」
『標的は南棟の奥から２番目の教室の中だよ』
「じゃあ、行くか！」
――――――
教室は、窓も扉も全て開け放たれていた。なんと無用心なことか。それほど自信があるのかな。
開いた扉から無数のカッターが飛んでくる。先陣をきって歩く蒼矢はそれを簡単に避けて、教室内に入り込む。
後ろからついていく私達も、カッターナイフの雨をかいくぐりながら、教室に身体を滑り込ませた。
琥珀には、隣の棟からとどめをさしてもらうために待機して貰っている。
それまでは彼女に隙ができるまで、私たちが相手をする。
夢の中だからだろうか。カッターの襲撃は止むことを知らず、避けても避けきれないほどに隙間無く降り注いでくる。無尽蔵に斬り付けようと進むカッターの刃が、蒼矢の全身に傷をつくりだした。
蒼矢だけではない。すずさんも、蓮花ちゃんも、私にも、刃による傷は増えつつある。
「……チッ」
蓮花ちゃんが舌打をする。相当お怒りのようだ。
「……俺翡翠と違って痛みには強くないんだけど？」
すずさんが愛沢を睨みつける。
「いったいなァ…」
蒼矢は笑ってはいるが、目が据わっている。
蒼矢は、彼女に銃をむけて、わざと当たらないように耳の隣ギリギリのところで撃ち放った。
当たりはしなかったが、十分威嚇になったようで、彼女はカッターを投げる手を止めた。
「……死ね。」
今度は確実にあたるよう、彼女の眉間に狙いをさだめた。
そして、引き金に指をかけた。
音も無く、彼女の頭が消え去った。
―否。破裂した、というべきか。
琥珀が先手を取られまいと、奇襲をかけたのだろう。
彼女の頭部が破裂し、髪と頭皮の肉、彼女の血液、脳やら頭蓋骨の破片やらが飛び散った。
いつのまにか蒼矢の前に立っていた琥珀の頬に、彼女の鮮血と脳漿がびちゃびちゃとかかる。
琥珀は素手でそれを拭った。
「俺が殺るっつったろ」
琥珀は振り返る。
彼女の周りは、汚らしい血液の緋色で塗りつぶされた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鮭植物 - 色々あって、15話加筆しました。 (2018年2月5日 19時) (
レス) id: c73bb7fdfd (このIDを非表示/違反報告)
涙戯＠そこひれ(プロフ) - あけましておめでとうございます、日に日に増えていき楽しくなってきました、今年の黒獏もよろしくお願いいたします (2018年1月1日 18時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
鮭植物 - 皆様、明けましておめでとうございます。作者陣の都合もあり、更新は昨年に引き続き亀のようにゆっくりになるとは思いますが、今年も黒獏を宜しくお願い致します。 (2018年1月1日 14時) (レス) id: 069861b6b5 (このIDを非表示/違反報告)
沫斗＠noir(プロフ) - コメント欄かなしい、、、、 (2017年10月26日 20時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
Alyssum - MFさん» ドンマイ (2017年8月7日 15時) (レス) id: bc44d2c5f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そこひれ＠そこの引き出しレタス x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2017年5月28日 18時
