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16話★:個人的なはなし ページ20

手紙には、簡潔に『翠一人だけで一番下の階に向かえ』と書かれていた。
私を漢字表記で翠と呼ぶ人間は、一人しかいないから、差出人はその時点で確定していた。

「…一応探索して知ってはいたけど、広いよなぁ。この空間」
私はひとり、壁も天井も何もかも埋め尽くすほどの扉が並べられてもなおだだっ広い空間を
下を目指して歩いていた。
階段の途中にも扉あるってどういうことなんだろ。ま、いっか。

「問題は…下に行って、何をすればいいのか、だよねぇ」
手紙には行けばわかると書いてあったけれど、本当、予想できない。
あのひとに会って数年、毎晩のように夢の中で二人だけで話してきたけれど
未だにあのひとが何を考えているのかわからない。
…実は何も考えてない、とかだったらちょっといやだなぁ…
まあとにかく何も考えずにまずは一番下の階を目指し、階段を降り続けた。



「やっと来た…これ目、覚めたら筋肉痛になってたりしないよね…」
最下層、私が始めてエントランスに来れるようになってから一度だけ来たことがあったけれど
上の階よりももっと広くて、中心に一つだけ大きな扉がある。これは前から変わっていないようだ。
ただ、大きな扉の近くに、緑色の扉が増えていた。
なんだろ、あれ。
え、もしかしてあの扉開けなきゃいけないとか?だったら無理ゲーじゃない?
私も一応鍵あるけど、あれ折れてて半分ないんだよ??無理じゃん。
と、一人慌てていると、ポケットに入れていた手紙がガサガサ動き出した。
「え?」
取り出して紙を広げると、中の文字が変わっていた。

『大丈夫。あの扉は、君なら鍵は必要ない。ただ扉の前で、彼女の名前を呼べばいい。それだけで、
後は君が何もしなくても、彼女のほうから鍵を開けてくれるだろうから』

うわぁ、あのひと何でもアリかよ……
つうか彼女って誰?
と、また手紙の内容が。もはや怪奇現象だ………。

あー……わかった。オーケーオーケー。この名前を扉の前で言えばいいのね。
全く…なんだってこんなこと私に…
つうか名前わかったけどやっぱり知らない子だし……
ま、いっか。あのひとが言うんだ。やらなきゃ。

私は、手紙をポケットにしまって、緑の扉の前に立った。
そして、先程教えられた名前を反芻する。
そして、声に出して、彼女の名を呼んだ。

「えっと…『――――』。」

扉が開いて、私は先へ進んだ。
一面緑色の、森が広がっていた。
その先で、髪の長い少女が此方を見つめて、口を開いた。

「君は、誰?」

17話◆→←15話★:いってらっしゃい



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鮭植物 - 色々あって、15話加筆しました。 (2018年2月5日 19時) (レス) id: c73bb7fdfd (このIDを非表示/違反報告)
涙戯@そこひれ(プロフ) - あけましておめでとうございます、日に日に増えていき楽しくなってきました、今年の黒獏もよろしくお願いいたします (2018年1月1日 18時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
鮭植物 - 皆様、明けましておめでとうございます。作者陣の都合もあり、更新は昨年に引き続き亀のようにゆっくりになるとは思いますが、今年も黒獏を宜しくお願い致します。 (2018年1月1日 14時) (レス) id: 069861b6b5 (このIDを非表示/違反報告)
沫斗@noir(プロフ) - コメント欄かなしい、、、、 (2017年10月26日 20時) (レス) id: 4411fb7380 (このIDを非表示/違反報告)
Alyssum - MFさん» ドンマイ (2017年8月7日 15時) (レス) id: bc44d2c5f5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そこひれ@そこの引き出しレタス x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2017年5月28日 18時

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