古泉一樹の過去 (ページ12)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:2,529 hit

10 ページ12

彼の言葉に甘え、肩を貸して貰い、部屋に戻った。少し散らかっていることもあって、彼を部屋に入れるのはあまり気が向かなかったけど、まあ、僕の自業自得だ。仕方ないか。

僕をベッドに座らせ、床に座った彼は、真面目な顔をしてこう言った。

「長門に聞いた話があるんだ」

彼はそう切り出し、話し始めた。それは、僕が予想していた事に、ピッタリと一致していた。

「長門さんが言っている事ですし、それは正しいことなんでしょう・・・僕は、どうすべきなんでしょうね」

弱音を吐くつもりは無かったけれど、つい口が滑ってしまった。すると、彼は、意外なことに微笑んで、こう言った。

「お前がしたいようにすれば良いだろ。俺も、出来る事があれば手伝う」

「・・・え、あの、」

「たまに我儘言う位なら、ハルヒも許してくれると思うぞ」

そう言う彼の表情は、昨日の涼宮さんのような、優しい笑みだった。

でも、僕は、何故か強い既視感を感じた。まるで、あの繰り返す8月の、喫茶店で感じた既視感のようだった。

「どうした?」

彼の声が聞こえたけれど、何も返せない。既視感はさらに強くなる。

「・・・あ」

そして、思い出してしまった。あの事を。

どれだけ、二人で沈黙していただろうか。

気が付くと、彼は僕の隣に座っていた。また、さっきの微笑み。

「お前がここで泣いたって、俺は構わない。我慢したって、良いことはないぞ」

・・・あなたは、やはり、優しい人ですね。

そして、僕は、たくさん泣いてしまった。4年間、我慢していた分も含めて。