いつかこの涙が＿west.3

感謝届けます ページ18

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本木side




"本日は、コンサート事務局主催、 ジャニーズWEST..."







開演前のアナウンスが、広いドームの裏側まで聞こえてくる。


独特の緊張感。毎回のライブで感じるものだけど今回はいつもと少し違った。


それは、初めてのドーム公演だからなのか、





A｢...もっちゃん。｣




3ヶ月前の私には想像もつかなかったAが、目の前にいるからか。




廊下に並ぶスタッフに声をかけられながらステージ裏へ向かうメンバー達。

彼女は1人ひとりと挨拶を交わしながらゆっくり歩いてきた。








本木｢...っ、、｣




私の前で立ち止まるA。




お互いに言葉は発さずじっと見つめ合う。

この場だけ、時が止まってるように感じた。







A｢...っふぅ、｣



すると、お芝居の前にするように、目を閉じてすぅっと1つ大きく深呼吸したA。


いつもならそこで顔つきが変わり完全に役に入り込むのだが、







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A｢...めっちゃ楽しみ、笑｣








今日はいつもと変わらないように見えた。


その無邪気な顔に周りのスタッフも安心し、Aとハイタッチやハグを交わしながらそれぞれの持ち場へと移動して行く。









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そこからは、









"盛り上がれんのか、？"


"...オレら次第やあぁっ!!!"





一瞬のような、とても長かったような
そんな不思議な時間だった。




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"...オンタイム、18時スタートですっ"


"...もっちゃん、っいってきます！"





いつも通り裏はいろんな声が飛び交ってて。


...私、ちゃんと行ってらっしゃいって言えてたかな。



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大歓声をあげる4万5千人の中、









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2日間、彼女は最後までステージに立った。






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メンバー、スタッフも思いが溢れ、ファンの皆さんも一緒に感極まるような場面も多く見られた中で、



...彼女は1人、一切涙を見せなかった。







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"Aちゃん、凄くいい顔してますね、"






隣でモニターを見つめるメイクさんのその一言で気づく。






...あの深呼吸は、"いつも通り"の笠波Aを演じるためのものだったんだと。

逆に取れば、演じていないと崩れてしまいそうなほど本当は限界だということを。





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ただ凛として、淡々とそこに立ち続ける姿は、

とても美しかった。






その姿にメンバーをはじめ、スタッフである私達は泣かされたのだ。





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