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大我は口角を上げて俺を見た。
「そう、俺ぬらりひょんの先祖返りなんだよね」
「あぁなるほど」
話には聞いたことがある。
ぬらりひょんとは忙しくしている人のところにやって来て、勝手に家に上がり込みお茶などを飲むという妖怪。
今の彼の様に。
「まぁ邪魔しないなら居てもいいけど」
「高地は?」
「ん?」
「高地は何の先祖返り?」
何処から取り出したのだろう、今度は煎餅を齧りながら聞いてくる。
ぬらりひょんは掴み所がないと言われているがきっとその通りなのだろう。
「俺は狢」
「むじな?」
「狸みたいな動物だよ」
人を化かす代表的な妖怪にはよく狸や狐が上げられるが、他にも似た様な妖怪は沢山居る。
俺はムジナという動物の妖怪。
道を川だと思わせたり物に化けたり、方向感覚を無くすことも。
自慢じゃないけど狸や狐よりも多くの術を使うことが出来るんだ。
まぁ俺は大人だから迷惑になるような事はしないけどね。
「面白そう!何かやってよ」
「何かって?」
「何でもいいからさ」
興味を持たれて悪い気はしない。
それなら少しだけ妖術をお見せしよう。
「うわ!え?どうなってんの?」
いい反応をしてくれる。
大我が座っていたソファからツルが伸び花が咲き、布が枝へと変わっていく。
あっという間に木で出来たメルヘンなソファの完成。
「どう?」
「凄い!」
「ふふ、良かった」
こんなに喜んで貰えるなんて化かし甲斐が有るというものだ。
妖術を解けば当然ソファは元に戻って大我は少しガッカリしていた。
「でもそっか、面白いけど樹とは相性悪いね」
「樹と?」
そういえば幼馴染の北斗については知っているが、他の皆は何の先祖返りなのだろうか。
「気になるなら悪戯してみなよ、今みたいに」
悪いことを企む子供のようにニヤリと笑う大我に同じ様な表情を返してやった。
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作者名:やた | 作成日時:2022年2月3日 1時