メゾン・ド・原石 (ページ35)

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かき氷にフランクフルト、じゃがバター。
食べ歩き腹も満たされてきた頃、きょもが声を弾ませた。

「うわ見て！射的の景品にバトルカードある！」

それは祭りの定番遊戯、射的。
玩具の銃で的を撃ち景品を獲得する遊びだ。
その景品の中に最近きょもが集めているカードゲームがあった。

「やれば？」

「当たるかなぁ」

店のおじさんに小銭を渡し銃を構えるきょもに、皆も集まりワクワクした顔で見守る。

パンッ！

「あぁ外した…」

「大我もう少し右だよ」

「俺代わろうか？」

「確かに北斗ならいけるかも！」

外してしまったきょもは諦めず次の弾を込める。
その間もワイワイと騒いでいて賑やかだ。
でも何だろう、この違和感。
皆笑っている筈なのに胸がざわつく。
ふと、足元に目をやった。

「高地？」

どうして気が付かなかったのか、小さな狢が蹲りフルフルと震えている。
何故誰も彼に目を向けないのか。
こんなにも場違いな姿を晒しているというのに。

いや違う。
俺だけが見てえいるんだ。
俺が雲外鏡だから。
きっと皆の目には笑顔を浮かべたいつも通りの彼が映っているに違いない。
今この場において彼を救えるのは俺だけだ。

「俺と高地トイレ行ってくる！」

狢の姿になった高地を抱き上げ人気の無い場所を探す。
後ろから皆の声が聞こえた気がしたけれど、今は聞いている余裕は無かった。