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−北斗−
ジェシーと樹を見送った後、携帯端末を確認する。
京本からの連絡は無し、きっとまだ寝ているな。
ならば俺はどうしようか。
正直言うと俺は暇な身である。
何故なら京本が部屋から出てこないから。
主人が自室に篭っていてはSSの仕事も無いわけで。
はぁと息を吐き自室へ帰る。
俺の部屋は比較的物が多い方だと思う。
その七割近くは本のせいで、住人からは図書館呼ばわり。
確かに店が開けそうなほど沢山あるけれども。
棚から適当に本を取りパラパラ捲る。
これは一種の癖みたいなもので物事を考える時に良くする行為。
「そういえば今日だっけ」
好んで読んでいたシリーズの最新巻が出るのは。
本を閉じて棚に仕舞う。
たったこれだけの事なのに何だかできる人みたいでクスッと一人で笑ってしまった。
支度をし空模様を確認するため外を見ると丁度一台のバイクが出て行った。
きっと高地が仕事へ向かったのだろう。
そういえば慎太郎はどうしたのだろうか。
初めてSSとして働くこととなった彼は張り切っていて、昨日も一日中高地の後を追っていた。
そんな彼のことだからてっきり職場にもついて行くと思っていたのだけれど。
エントランスへ降りるとウロチョロしている慎太郎がいて思わず笑みが漏れる。
だって飼い主に置いていかれた犬みたいなんだもの。
「あ、北斗!高地知らない?」
「高地ならたった今出ていったよ」
「え!?もう行っちゃったの?」
どうやら一歩遅く見送りも出来なかったらしい。
寝癖の残った頭が彼の必死さを物語っている。
「俺どうしよう…どうしたらいい?」
「大人しく帰りを待てばいいんじゃない?」
「でも俺SSなんだよ?傍に居ないと守れないじゃん!」
如何にも新人って感じでつい可愛いと思ってしまった。
そうだよな、高地が初めてのお客さんなんだもんな。
「それじゃあ連絡してみなよ」
「あ、そっか!」
当たり前の事を言ったつもりではあるが名案だとでも言うように目を見開く慎太郎はやはり末っ子って感じ。
一生懸命文字を入力しじっと画面を見つめる。
メッセージを送ったばかりなのに返事が返ってこない、既読がつかないと騒ぐものだから落ち着く様に軽く背中を叩いてやった。
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作者名:やた | 作成日時:2022年2月3日 1時