メゾン・ド・原石 (ページ15)

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－北斗－

今日は本当に驚いた。
まさか疎遠になっていた幼馴染と再会するなんて。
空に星が煌めき出した頃、屋上庭園のベンチに座り昔の記憶を思い出す。
高地との出会いは雑木林の中。
迷って帰れなくなってしまった俺を彼が助けてくれたんだ。

「あの頃は楽しかったな」

ついポロッと零れた言葉にいやいやと首を振る。
今だって十分満喫しているではないか。
人付き合いの悪い俺に笑いかけてくれる住人達と過ごす日々は飽きる事を知らない。
ただ、純粋さと素直さが抜け落ちてしまっただけ。

「うわぁ星綺麗！」

不意に聞こえた、記憶にあるものより随分大人びた声に振り返る。
目をキラキラさせて空を見上げる幼馴染。

「高地」

「あれ北斗こんな所に居たんだ！」

何してるのと首を傾げるその姿に何故だか涙が出そうになって、咄嗟に今度は俺が空を見上げた。

「今日はよく晴れてたから、きっと星が綺麗だろうと思って」

「北斗も？俺と一緒じゃん！」

弾んだ声が今度は直ぐ近くから聞こえて、横を向いたら少しだけ低い位置に彼の顔があった。
あぁ、高地は凄いな。
昔のまんま、何も変わらない。
純粋さも素直さも何もかも。

「高地さ、俺ん家忍び込んだの覚えてる？」

俺達の様な先祖返りが産まれる家は不思議と栄え、そのために縁起物として育てられる事もある。
一見良い事のように思えるかもしれないが、こちら側としてはたまったものではない。
それはつまり自由の無い世界で孤独に生きるということだから。

松村家は代々武術で名を揚げてきた名家で、先祖返りとして生まれた俺は物心ついた時から様々な武術を叩き込まれた。
負ける事は許されず、常に頂点を維持しなくてはならない。
そのプレッシャーに押し潰されそうだった俺を救ってくれたのが高地。

高地はこの世界では珍しく極普通の家に生まれ、両親を早くに亡くし祖母と田畑を耕して生活していた。
そんな彼と会える時間はほんの数分。
稽古の合間に少し話をする程度。
でもそれが心の支えとなっていた。
高地は気づいていないかもしれないけれど、その笑顔を見るだけで緊張が解れ気持ちが落ち着いたんだ。