秘書はいったい、なぜ？3 (ページ18)

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『焼けましたよ、どうぞ』

　
　
　
　

私はトングで副会長の皿に肉を入れると見せかけて、

そのまま自分で食べた。

　
　

登坂「なんだよ」

『ふふっ』

登坂「この店がそんなに好き？」

　
『ん～、父や姉達との外食といえば必ずここでした、借金の返済があったからなるべく安い店に』

登坂「なるほど、お父さんはどんな人？」

　

『 ...今日は質問が多いですね、ロッカーです』

登坂「ん？」

『バンドのギタリストです、父が楽器店を経営して詐欺にあった話はしましたっけ？』

　

登坂「聞いた、それでお前は高卒で就職したんだろ」

　

『はい、父は姉達の学費を稼ごうと工事現場で怪我したり1発当てるって闇金に手を出して問題を起こしたり、自分に合ってない仕事をしたからですかね、今は好きな仕事をして姉達も夢を実現しました』

登坂「 ......家族を恨んだりしねえの？」

『しないですよ、わざとじゃないし』

　

登坂「人は正しいことをする人生に価値があるって言うけど、実際は違う、犠牲になることで自分を失ってくどんな時も大切なのは自分自身」

　

『 ..... 』

登坂「自分が一番大切だって忘れたらダメ」

　

『 ....ふふ』

登坂「なにがおかしい」

『 9年もそばにいるせいか、そんな自分大好きって感じの言葉が慰めになります』

登坂「自分大好き？失礼だな」

　

『あははっ、さぁ、食べてください』

　
　

トングで肉を焼く。

　

登坂「貸せ、俺が焼く」

『え？』

登坂「休みだろ、お前に合わせるんだから俺がやる」

　

　
『ありがとうございます笑』

　
　

　
　
　
　

　
　
　
　
　

副会長は慣れてない感じだけど、頑張って焼いてくれた。

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