【七つの大罪】 ＊リク制短編集＊

重ねては滲む。〈切恋〉 ページ34

「キング！」

そう言って笑うディアンヌは、かつておいらの好きだった人に似てる。

『キング？ どうしたの？』

あのあどけない、可愛らしい笑顔。


＊

「おそよう、ハーレクイン。もうご飯できてるよ」

それは、ディアンヌと出会う前のこと。

「ああ、おはようA。ありがとう、いただくよ」

と席について、いただきます、と手を合わせる。


「あいかわらふおいひい」
「美味しいって？ ふふ、ありがと」

そういいながら髪を耳にかけるのは、君の癖だった。

__そういえば、君は嬉しい時と恥ずかしい時にその仕草をしていたね。


＊

「ハーレクインなんて、大っ嫌い！」

君が泣きながら怒った日。
おいらたちが、喧嘩した日。

内容なら、全部覚えてるんだ。

初めて君に大嫌いと言われたのは、いつだっけ。でも決まって最初に謝るのは君だった。


おいらたちが喧嘩した理由なんて、いつもほとんど同じ内容だった。

例えば。
ある日、君は散歩してくると言って夕方まで帰ってこなかった日があった。
やっと帰ってきたと思ったら、傷だらけで。

「なんで怪我してるのさ！？」__なんて、思わず大声で言ってしまった。

そしたら君は、「果物をとりに森に行ったんだけどね、ちょっとドジふんじゃって怪我しちゃった」なんて。


おいらは怒鳴った。

どうして1人で、散歩に行くなんて嘘ついて、あんな獣がたくさんいる森なんかに行ったんだって。

そしたら君も反論した。おいらを驚かせたかったんだと。____おいらの好きな果物をとってきて喜ばせようとしたんだと。


その言葉は少し嬉しかったけど、自分の知らないところで大事な友達____あの時は自分の感情に気づいていなかった____が傷つくのは本当に腹立たしかった。

それは、おいらへの、自分自身への怒り。
だけどおいらは、君に八つ当たりしてしまったんだ。


それが一番初めの喧嘩だと思う。


仲直りは、どちらからっていうか、気づいたら仲直りしていたね。ただ、仲直りしたあとに君は謝ってくれた。おいらも勿論謝った。


〈続く〉

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