ショートストーリー Inspired by EXILE TRIBE (ページ5)

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orgel 5 ページ5

男と女の力の差というものは自分が思っているよりも圧倒的だった。どう頑張っても振りほどけない、大きな手。

「まって、せんぱ…」

「今まで俺がどんだけ待ったと思ってんの？」

「嫌、待って、先輩、」

私の必死の抵抗で、10分は互いに格闘していたように思う。それでも先輩は諦めない。

そうこうしている間についに、ボタンに手がかかった。
まだ暑い日のことだったから、もちろん重ね着もしていない。

そのときの先輩に私が、相当魅力的だったのだろう。私に覆い被さるようにして降らせるキスに、為すすべもないまま腕だけで抵抗を試みた。

もちろん、叶うわけもない。

「やめて…先輩、なんで…」

「は？付き合ってんのにやめる理由無くね？」

「そんな…」

これほど自分の愚かさを呪ったことはない。なんで、あのとき手を取っちゃったんだろう。

怖い、怖い、嫌だ。

涙が溢れて止まらない。
そんな私をみた先輩は、その涙も喜びの反応だと思い込みますますヒートアップする。

もう、無理だ。そう思った私はあまりのショックに気を失っていた。

次に目が覚めた時には、保健室にいた。
飛び起きて服装を確認すると、しっかりと制服を身につけている。まさか、誰か先生に見られた？先輩はどこに行ったの？

そこまで考えて、例えようのない恐怖が私を凌駕した。私、シちゃったの…？

「あなたのお友達がここまで運んで来てくれたわよ。貧血で倒れちゃったんですって？親御さん呼ぶから、ひとまず帰りなさい。」

携帯にも、臣からの
〈時間かかりそうだし先帰ってるわ〉とのメールが入っていた。

一体誰が運んで来てくれたんだろう？
もしかしたら先生が私のことを気遣って嘘をついてくれているのかもしれないけれど。

ピロン、と通知音が鳴ってメールが一通届いた。

それは先輩からの、「ごめん、別れよう。」というメールだった。

それからというもの、どんな男性に声をかけられても何かしらの恐怖を感じてしまう。
付き合ってもまた私自身を愛してはくれないのではないか、また無理矢理迫られるのではないか。

背中に感じた机のひんやりとした感覚が私を鈍らせ続けていた。

あれから、心を開ける男は臣だけになった。

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なぜその先輩が、目の前に。