orgel 2 ページ2
今日もいつも通りその日の一通りの業務を終えて帰宅。
なんとなく気だるさの残る体を家のベッドに投げ出した。
うつ伏せになって枕に顔を埋めると蘇る、今朝のこと。
臣『…まだ、あの事気にしてんの？』
気にしていないわけが、無い。
こうしてこの事を思い出してしまうたびに私は棚の扉を開けて、繊細なつくりの箱をひとつ取り出す。
臣がくれたオルゴール。
高校生の時にひどく恐怖を感じたことがある。当時とても傷ついた私から掻い摘んで話を聞いた臣は、なんとか私を元気づけようと色々な事を考えてくれた。
そんな臣に甘えることが何故かできなくて。
「いいから、本当にもう、大丈夫だから。」
そう言った私に手をのばした臣はすんでのところで何かに躊躇って伸ばした手を引き戻し、その日はそのまま別れた。
次の日、臣は学校に来なかった。
その次の日になっても臣は学校に来なかった。
いつもの体調不良ならメールを送ればすぐに返事がくるのに…。
携帯を持ってから2日間全く連絡が取れない事なんて初めてで、不安を感じ始めた時だった。
〈外来れる？〉
携帯に入った一通のメール。差出人は臣。
急いで部屋のカーテンを開けると下には臣がいて、急いで階段を駆け下りて2日ぶりに顔を合わせた。
「あの…何やってたの？」
私がそう言っても、臣は私を見つめたまま。私を見つめる臣の瞳に吸い出されるように、心の奥底からじわじわと抑えていた気持ちがこみ上げた。
「臣に何かあったらどうしようって不安だったじゃんバカ！！」
可愛らしさのかけらもなく必死に訴えた私に、あの日と同じように臣が手をのばした。
あの日と違ったのは、その手が躊躇うことはなかったこと。
その手で一度だけ強く私を抱きしめて、こう言った。
臣「俺なら…全部、あげられたのに。」
その言葉と一緒に私の手に紙袋を握らせて、臣は帰ってしまった。
部屋に戻って紙袋を開けると、そこにはオルゴールが入っていた。
非常に繊細な雰囲気を醸し出すそれには刻印が入っていて、調べてみるとどうやらそれは有名なオルゴールの工房らしかった。
所在地も遠方だったことからすぐに察しがついた。
臣が学校に来なかった2日間は、きっと私のためだ–––––––
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作者名：なす | 作成日時：2018年2月18日 15時
