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私からカバンを取りあげて、制服の上から宮近くんのジャージを肩にかけてくれる。


あぁ、また洗濯して返さないと。


びしょ濡れな上に着ちゃったから、宮近くんのジャージまで濡れちゃうよ。





『……どうして知ってるの?』


「そりゃあ、幼馴染だし」


『私そんなに分かりやすかったの?』


「多分、海人も気づいてるよ」


『うそ、恥ずかしい……』




海斗だけじゃなくて、中村にも気付かれていたの?


それならふたりとも、教えてくれれば良かったのに。


海斗も中村も、私のことを面白がって見ていたのかな。


恋してる人って、周りから見たらどう見えているの?


私にはキラキラして見えていたけど、海斗たちにはどう見えていた……?





「好きな人がいることって、別に恥ずかしいことじゃないから。人を想えるって良い事だと思うよ、俺は」


『ふたりとも、気付いてるなら教えてくれればよかったのに』


「Aの好きな人はちゃかだぞ、って?」


『うん』


「それはさ、うん」


『なに?』


「別に、気付かなくてもいいって思ってたから」





よく分からないことを言う海斗。


ホームには、電車が来ることを知らせる音とアナウンスが流れた。





『どうして?』


「色々あんだよ、男には」


『気になる』


「いいから、そこは気にすんな」





たまに言葉を濁す海斗は、意地悪だ。


思っていることは全部言ってくれていいのに。


そう思っていると、ホームに電車が到着して乗り込んだ。


私たちは電車の中では迷惑にならないように話さないと決めているから、何も言わずとも黙って乗車して最寄り駅で降りた。






「で、なんで失恋したわけ?告ったの?」





駅から家までの帰り道、海斗はまた話し始める。





『好きな人、どんな人が気になって聞いたの。そしたら……』


「そしたら?」


『自立してる人、何かにひたむきに取り組んでいる人が好きって』


「ん?具体的に誰とか言われなかったの?」


『それは、そう……』





とぼとぼと歩いているせいで、なかなか進まない。


疲れているから早く家に帰りたいのに、これじゃあいつになったら着くか分からない。


涙だけは止まらないのに。


そんな私の歩幅に合わせて歩いてくれていた海斗の足が止まった。

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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時

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