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「こんなとこでどうしたの？なんか深刻そうな顔してたけど」
『大丈夫だよ。げんちゃん今日部活は？』
「隠れ鬼の日だよ！だから今日はどこ隠れよっかなーって思って、職員室なら誰も来ないかって思って来てみたの。そしたらAちゃんがいた！」
『ふふっ、そっか』
「でも流石に職員室は反則かなー」
うーん、と悩んでいるげんちゃんは きっといつでも本気なんだろうな。
隠れ鬼なんて見つかったら捕まって楽になるのに、なんて考える私とは違う。
「ちゃか、いつも見つからないんだよなー。どこに隠れてんだろう」
困った様子で髪をかきあげた。
一生懸命考えているげんちゃんの手助けをしたくなる。
『げんちゃん、鬼ってもうそろそろ来ちゃう？』
「うん、多分」
『じゃあ図書室行こ！』
「図書室？隠れてるのバレたら走れないじゃん」
『鬼だって、走れないからきっと行かないよ』
「あ、そっか！」
ふたりで図書室に向かって歩いて、扉を開くとそこには図書室の管理を担当している大人が一人。
放課後の図書室はとても静かだ。
げんちゃんが、座っているよりも本を選んでいるフリをしている方がバレないからと、奥の本棚に身を潜めた。
「Aちゃん」
生徒は他にいなくとも、図書室のルールは守らないといけない。
大人の人から見えない位置の本棚に向かって、隣同士で立つ私たち。
小声で話しかけてくるげんちゃんを見ると、思ったよりも顔が近かった。
「ちゃかから、マネージャーの件断られたって聞いた。でも俺、やっぱりAちゃんにやってほしい」
『ごめんね。やらないって決めたから』
「だって、美希先輩もういなくなるよ？引退だよ？だからいいじゃん」
『なんで今美希先輩が出てくるの？』
「美希先輩とちゃかが一緒にいるとこ、見たくないから断ったんでしょ？」
『……え、』
「この前廊下で話してた時だって、あの二人見て苦しそうな顔してたから」
げんちゃんの言うこの前は、きっとげんちゃんと海斗が再会した日。
1年生の教室前の廊下から、中庭にいる宮近くんと美希先輩を見た時。
げんちゃんは昔から、場の空気を読むのが得意だった。
きっと、その時にバレちゃったんだ。
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作者名：愛生
| 作成日時：2024年1月21日 2時
