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「俺だけ距離感あるの、気まずいじゃん。気軽に接してよ」





それは、宮近くんが好きだからだよ。


好きだから、近付けないんだよ。


なのに、好きだと自覚した後にそんなこと言われたら勘違いしちゃいそうになるからやめてよ。





『……そんなの、できないよ』


「じゃあ、できるようになって」


『え?』


「さっきも言ったでしょ。もっと話したいって」





好きだから近付けないのに





「Aのこと、教えてよ」





どうして宮近くんはその壁を壊そうとしてくるんだろう。








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『……ってことがあって』


「海斗って悪い男だな」





隣で吐き捨てるように言ったのは、相変わらず毒舌の中村。


昨日あったことを全て話すのは恥ずかしくて、宮近くんが話してきたことだけを下校中に話していた。


中村との下校を断ったのは、先生に呼ばれた用事を済ませたからで、その後偶然サッカー部と帰る時間が同じだったと誤魔化すと、そこは深堀りせずに話を聞いてくれた。





『宮近くんはそんなんじゃ、』


「ないって、言える?」





思わせぶりだって、わかってる。





「A、海斗が美希先輩が好きなこと忘れてない?」


『ちゃんと覚えてるよ。覚えてるけど、でも……』





美希先輩が好きでも、もしかしたら私のことも考えてくれるかもしれないじゃん。


近付けたら、宮近くんといい感じになれるかもしれないじゃん。


恋愛初心者の私には、これが今の精一杯なんだよ。





「いい鴨だな」


『宮近くんはそんな悪い人じゃない』


「じゃあ、仮に海斗が俺だとして、美希先輩が好きなのに他の女の子に可愛いとか言ってたら、どう思う?」





宮近くんで考えるのと中村で考えるのでは、何故か かなりイメージが違う。


なんというか、どれかと言えば中村がそうだったんだとしたら……





『……最低な男』


「ほらな?」


『うるさいな。宮近くんは宮近くんだもん!いいの!』


「はいはいそうですか」





呆れた様子の中村は、“あまり期待すんなよ”と言って、駅前で手を振って分かれて帰って行った。




私だって期待なんて、したくないのに。


期待してしまいそうになるのは、宮近くんのせいなのかな。


それとも、私が単純すぎるだけ?

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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時

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