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『宮近くん、今日って帰り1人？』
「ん、一緒に帰る？」
誘わなくても察してくれる、そんなところも大好きで。
外から聞こえる雨音。
冬に近づいて日が短くなった薄暗い空。
前よりもふたりきりでいる感覚が強くなる。
このまま、時が止まればいいのに。
部活が終わって教室まで来てくれた宮近くんと、ふたりで玄関に向かう。
「今日は傘持ってきた？」
靴を履き替えていると、宮近くんはまた玄関に置いたままにしていたビニール傘をチラつかせた。
『あ、傘……』
今日は言い訳を何も考えずに残ってしまっていたから、焦ってカバンをあさると、中には折り畳み傘があった。
でも、宮近くんに近づくなら、傘は無いと言わないと。
『えっと、傘は……』
でも、嘘は苦手で言葉が出ない。
焦っている時の嘘は尚更苦手。
そんな私を見た彼は、数歩私に近づいて顔を覗き込んできた。
「入ってく？」
思いもよらない言葉。
『え？』
「いいよ。入っても」
入るって、ひとつの傘に一緒に入るって事だよね？
この前は傘がなかったのと、ちゃんと口実を考えていたから嘘をついて入らせてもらったけど、今回は違う。
『でも、』
「ないってことにしても、バチは当たらないよ」
この言いぶりは、きっと私が傘を持っていることは分かってる。
ここで入りたいなんて言ったら、私の気持ちはバレバレになるのかな？
「どうする？入るか、入らないか」
でも、そんな気持ちがバレちゃうことなんて、時間の問題かもしれない。
『……入っても、良いですか？』
「もちろん」
だって相手は、なんでも見透かしてきそうな大人びて見える宮近くんなんだから。
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作者名：愛生
| 作成日時：2024年1月21日 2時
