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ある日の帰りのホームルーム中。
また雨が降っている。
今日もサッカー部は、校内で隠れ鬼をするのかな。
そう考えているうちに、チャイムがなって帰りの挨拶をした。
教室がザワつく中で、中村に声をかけた。
『中村ごめんね。私、職員室に呼ばれてるから一緒に帰れない』
「また?わかったけど、すぐ終わるなら俺待ってるよ」
『大丈夫。また明日一緒に帰ろう?』
「ん。じゃあ明日な」
「うん、また明日」
教室で中村を見送って、他のクラスメイトもみんな教室から出ていく。
また教室にひとり。
宮近くんが来たところで、やっぱり何を話せばいいかわからない。
マネージャーのことは体験に行ったまま返事を出来ていないから、話さなくちゃいけないんだけれど
それを話してしまうと、もう宮近くんと話すことがなくなりそう。
「あれ?また居た」
ニコッと笑う宮近くんは、教室に入ってきて私の前の席の椅子に跨って、こちらを向いて座った。
『宮近くん』
「ん?」
『マネージャーの話なんだけど』
私の机に頬杖をついて見つめてくる。
「やめとく?」
『……うん』
「そっか。わかったよ」
優しく笑う宮近くんは、私に何も聞く様子はない。
それに、きっと私が話しやすいように、やめとく?なんて先に言ってくれたんだろう。
『どうしてか、聞かないの?』
「聞いてもAの気持ちは変わらないでしょ?」
『うん』
「だから 聞かない」
宮近くんは、論理的な思考の持ち主なんだと思う。
聞いても気持ちが変わらないなら聞かない、なんて私にはできないかも。
宮近くんの考え方、好きなもの、私とは全然違うのかもしれない。
そういえば私、宮近くんの好きなもの全然知らない。
『あのね、宮近くん』
「うん?」
『宮近くんって、どんな音楽が好き?』
少し目を開いた後、いつも通りおっとりとしたタレ目に戻る。
「邦ロックが好きかな」
『邦ロックね!じゃあ、好きな映画は?』
私が前のめりになって聞くと、思ったよりも顔の距離が近くなってしまって急いで離れた。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時