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『緊張してる?海斗、笑って!』
頬に触れて口角を上げるように引っ張るけど、なんだか不安そう。
「……うん」
どこか、浮かない顔。
私を通り過ぎてげんちゃんの目の前に立った海斗は、ゆっくりを口を開いた。
「元太、久しぶり」
「え、もしかして海斗?」
『うん』
「うわ!やべー!」
とても嬉しそうなげんちゃんと、何故か冷静な海斗。
そのままふたりが何度か言葉を交わすと、小学生の頃の距離感が掴めてきたのか、2人で話が盛り上がり始めた。
お邪魔になったら悪いしと、私は廊下から外を眺める。
校舎の中庭のベンチに座って話しているふたり。
……あれ、宮近くんと美希先輩?
美希先輩が笑って宮近くんの肩を叩くと、宮近くんはなんだか嬉しそうにその肩を触っていた。
見たくないのに、見てしまうのはどうしてだろう。
「何見てんの?」
私が外を見ていたのが気になったのか、げんちゃんが隣に来て中庭を見た。
『ううん、別に』
「あ、ちゃかと美希先輩じゃん」
『……』
私も美希先輩みたいになれたらなぁ。
宮近くんが好むような女の子になりたいのに、それが出来ない自分が憎い。
「A?」
声をかけてきた海斗は心配そうな顔をしていた。
『ごめん、ちょっとトイレ』
そんな顔しないでよ。
逃げたくてトイレに行って心を落ち着かせようとしても、やっぱり落ち着かなくてすぐに元いた場所に戻った。
海斗とげんちゃんはまだ楽しそうに話している。
「Aちゃんと海斗、連絡先教えてよ。LINEでもインスタでもいいからさ!」
『もちろん』
「当たり前じゃん!」
話していて楽しいはずなのに、ずっと美希先輩と一緒にいた宮近くんの表情が消えなくて苦しい。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時