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翌日のお昼休みにげんちゃんに会いに行こうと思って、朝 一度席に着いてから宮近くんの肩をトントンと叩いた。
「ん、どうした?」
振り向いた宮近くんは今日もかっこよくて、目が合うだけでドキドキする。
『あの、げんちゃんって1年何組?』
「たしか1組だった気がするけど、行くの?」
『ちょっと話したいことがあって』
「そっか。あいつAが会いに行ったらきっと喜ぶよ」
笑顔になる宮近くんは、とても後輩思いで優しい人。
『子犬みたいで、人懐っこくて可愛いもんね』
「Aに対しては、それだけじゃないと思うけど」
それだけじゃないって何?
首を傾げると、宮近くんは“気にしなくていいよ”と言って、教室に入ってきた先生を指さして私を座るように促した。
お昼休みになってご飯を食べ終えた後、海斗を廊下に呼び出した。
『海斗、ちょっと一緒に来てほしいんだけど』
「どこに?」
『1年1組。げんちゃんのとこ行きたいなって』
「あー!いいよ!俺も会いたいし」
そう話して一緒に1年生の教室があるフロアにたどり着いたけど、教室にズカズカ入っていくのは恥ずかしい。
『あの、げんちゃん……松田元太くん、居ますか?』
「あ、元太っすか?」
教室から出てきた男の子に声をかけると、その子は“元太ー!可愛い先輩来てる!”と教室にヒョコッと顔を出して叫んだ。
その声に振り向いたげんちゃんは、私の顔をみるなり 勢いよく立ち上がった。
教室の中には、そんな彼に視線を向ける女の子が何人かいて、クラスでも人気者なのがわかる。
「Aちゃん!どうしたの?」
教室から出てきたげんちゃんは、今日もやっぱり爽やかで、少女漫画の男の子のよう。
『げんちゃん、急にごめんね』
「全然。寧ろいつでもウェルカムだよ!」
“俺Aちゃんのこと大好きだから!”
周りに聞こえるくらいの声で話すから、教室にいる人も、廊下にいる人も、パッと振り返ってこちらを見てくる。
……恥ずかしいよ、げんちゃん。
『あのね、実は会わせたい人がいて』
一緒に来たはずなのに、いつの間にか廊下の隅にいた海斗に手招きをすると、何故か眉間に皺を寄せて歩いてきた。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時