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Aがちゃかのこと好きなことは、俺は気付いていたけど、気付いてほしくなかったのが本音。
でもこんなに泣いている姿を見たら、俺はその恋を応援できないよなんて言えないし
彼女が好きな人と幸せでいれるなら、俺はそうなれるように、もうこんなに泣かせないように支えてあげたいと思った。
Aをおんぶしたまま駅に着くと、改札前にはちゃかが立っていて、きっとAが心配で待ってくれていたんだとわかった。
ちゃかと話すというと、“ばかいと!”なんて俺に叫んでくるさっきまで泣きじゃくっていた彼女。
そのまま放置してちゃかに近づくと、申し訳なさそうな顔をしてくる。
なんで俺にそんな顔すんだよ。
「ちゃか、なんでここにいんの?」
「A大丈夫かなって思って。忘れ物したって言って走って行っちゃったから」
「あー、うん、まぁ」
「これ、Aに渡して」
ジャージとタオル、傘を手渡してきたちゃかは、何を考えているか分からない。
Aの気持ちを察して、Aを追いかけなかった?でもそうやって、優しくするんだ。
それとも、何も知らずにAに優しさを振り撒いて、純粋なあの子をからかおうとしているのか。
俺たちがAのことをチラチラ見ながら話していたせいか、彼女はホームに向かって行ってしまった。
「ちゃか、一つだけ約束があるんだけど」
「何?」
「Aのこと、からかうような事したら許さないから」
「わかってるよ。松倉はAのこと好きなんでしょ?」
なんでも見透かすようなちゃかの目は誤魔化せない。
「……まぁ」
「そのまま守って、支えてあげなね」
「言われなくてもそうするつもり。じゃあな」
手を振って改札内に入ってホームに向かう。
きっと俺にこんな話をするってことは、ちゃかはAのことを恋愛対象だと思っていない。
この人、残酷なことするよな。
でも、彼女がせっかく恋をしたのにその気持ちを俺が潰してしまうなんてできないから
今はそんなちゃかの気持ちに気づかないふりをするよ。
Aが泣かないように、俺がそばに居るから。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時