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『海斗、ねぇ、海斗!』
それにしても、リアルすぎる声、触り心地。
持ち上げられる感覚。
腕だけが持ち上がって痛くて少し目を開けると、そこには泣きそうになりながら俺を運ぼうとするAがいた。
なんだ、幻聴じゃなかったんだ。
『海斗、ごめんね。ベッド戻ろ?』
「……トイレ」
『私支えるから、もう少し頑張って立てる?』
あぁ、今俺幸せかも。
Aに心配されて、Aと触れ合えて
熱は苦しいけど、ずっとこのままだったらAは近くに居てくれるのかな。
ちゃかのところなんて行かないで、俺の事ずっと気にしててくれる?
だったら熱なんて下がらなくていい。
ずっとずっと、そばに居てくれればいい。
……俺、メンヘラみたい。
Aと一緒に居られるなら、他に何もいらない。
こんな話したら引かれるかな?
嫌われるかな?
なんでもいいよ、一緒に居てくれるなら。
薬も飲ませてもらって、幸せ。
ごめん、こんな奴で。
俺、Aが近くにいてくれるだけでこんなに幸せだって思うんだよ。
だから、ずっと一緒にいてよ。
次起きた時には、Aが床に座ってベッドに突っ伏して寝ていた。
無防備な可愛い寝顔。
ずっと幼い頃のままで、天使みたい。
「泣かせてごめんな」
俺の声に反応したのか、目元がピクッと動いた。
そのまま目を開けたAは、安心した表情をしたあと、申し訳なさそうに寝ちゃったことを謝ってきた。
「ごめん、俺昨日しつこいとか言って傷つけた」
『……そんなの、もう忘れたよ』
あんなに泣いてたのに、忘れたなんて嘘。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時