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そう思っていたある日、ちゃかが日直でひとりで早く学校に向かっていた日があった。
先に教室にいたちゃかを驚かせようと、Aが後ろから近付いて、肩に手を置いて顔を覗き込んだ。
ちゃかは驚いたものの、Aも何故かそのままちゃかの顔を見てから動けなくなっていた。
……なんだろう、モヤモヤする。
そう思ったのは俺だけじゃなかったようで、隣にいた海人も険しい顔をしていた。
その日の夜、Aに漫画を返すために連絡を入れずに家にお邪魔した。
いつも通り部屋にノックして入ると、Aはお風呂あがりのようで、少し顔が赤くなっていた。
漫画を手渡すと、利き手の人差し指に絆創膏が綺麗に貼られていた。
ノートで切ってしまったという彼女は、何故か嬉しそうに絆創膏が貼られているところを見ている。
『これは宮近くんが貼ってくれたの』
「……ふーん」
俺が絆創膏を貼る時は、そんな顔しないのに。
小さい頃からずっと、Aが転んだり怪我をするたびに、絆創膏を貼っていたのは俺なのに。
なのに、何でちゃかに1回貼ってもらっただけでそんなに嬉しそうなんだよ。
「俺そろそろ帰るわ」
『え?もう少し居てよ、折角来たんだから』
こうして無意識に俺を苦しめるんだ。
彼氏でもないのに勝手に嫉妬して、不機嫌になった俺を引き止める彼女は狡い。
「週に何回も来てるだろ。昨日も来たし、今日は帰る」
そう言うと、とても悲しそうな顔をした。
……俺以外にも、そんな顔する日が来るのかな。
次の日の朝、俺と海人が話している間に、ちゃかとAがふたりで話をしていた。
普通に話しているように見えるけど、Aがなんだかよそよそしい気がした。
気を遣っている、というか、ソワソワしているような。
あぁ、嫌だな。
それってさ、きっとそうじゃん、ね。
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作者名:愛生 | 作成日時:2024年1月21日 2時